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大竹のキャリアの転機になったのが、35歳で出演した石井隆監督の映画『死んでもいい』(92年)だ。
この作品で大竹は、室田日出男演じる不動産屋社長の歳下妻を演じたが、話題になったのは若い店員を演じた当時26歳の永瀬正敏との激しい濡れ場だった。ゲストルームで永瀬に襲われ、「やめて~~!」と絶叫して抵抗するも行為は終了してしまう。
しかし落ち着きを取り戻すと、永瀬に玄関の鍵を閉めるように指示し、永瀬をベッドルームに誘い、自ら全裸になり白いベッドに横たわる。純白無垢のベッドで2人の激しい情事が行われ、大竹は絶頂に達する表情を演技とは思えぬリアリズムで表現した。
人間の情念を描かせたら右に出るもののない故・石井隆監督の演出を得たことで、大竹は女性の“業”を見事に表現。以降『GONIN2』(96年)、『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』(10年)と石井監督作品の常連となる。
時には憂いをたたえた表情で、時には快楽に身悶える仕草で
93年には篠山紀信の撮影で初のヘアヌード写真集も刊行してさらなる話題を呼んだ。全編ほぼモノクロ写真で、時には憂いをたたえた表情で、時には快楽に身悶える仕草で撮られた大竹は、見るものを耽美な世界にいざなう。
以降も、映画『黒い家』(99年)のヒロイン役では人間の狂気を凄絶に表現する一方、扇情的なラブシーンにも挑んでいる。タイトル通り、後妻を生業とする悪女を演じた『後妻業の女』(16年)では、金と欲に絡んだ人間もようを、これ以上はないというはまりっぷりで見事に体現した。