リニア中央新幹線は東京(品川)~名古屋間を最速約40分で結び、東京(品川)~大阪(新大阪)間を最速67分で結ぶ予定だ。まるで通勤時間である。

 こうなると、東京・名古屋・大阪は、もはやひとつの都市圏と考えて良いのではないか。2021年の総務省住民基本台帳によると、首都圏在住者は3,678万人、中京圏は1,138万人、近畿圏は1,824万人だ。これらを足すと、リニア中央新幹線が作る巨大都市圏の人口は6,640万人になる。人々の移動は、日本の経済に大きな活力を生み出すはずだ。それは東海道新幹線開業よりも大きなインパクトになるだろう……というように、リニア中央新幹線については東京~名古屋~大阪間の効果、役割が喧伝されてきた。

左から、森地茂氏、岸井隆幸氏、和泉洋人氏、黒岩祐治神奈川県知事、長崎幸太郎山梨県知事、阿部守一長野県知事、古田肇岐阜県知事、丹羽俊介東海旅客鉄道社長

「中間駅を作ってほしかったらお金を出してね」

 しかし、忘れてはいけない。リニア中央新幹線には「中間駅」がある。神奈川県は橋本駅付近、山梨県は甲府市大津町、長野県は飯田市、岐阜県は中津川市に設置する計画だ。それぞれの地元ではリニア中央新幹線の開通に期待しているけれど、その熱意が東京・名古屋・大阪の人々には伝わっていないように思う。ああ、駅ができて良かったね。盛り上がると良いですね。それ以上の関心を持たれていない気がする。

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中間駅に注目すべきではないか?

 なぜかというと、当初、JR東海は中間駅の建設費を負担するつもりはなかったから。「中間駅を通過する各県につき1つ」という構想はあったけれども、建設費は自治体に負担してほしいと要望していた。「駅を作ってほしかったらお金を出してね」つまり「負担してくれなければ駅を作りません」となる。

 これはJR東海があくまでも民間企業だからだ。東京~大阪間の建設費は約9兆円、このうち中間駅の建設費は約5900億円の見積もりで、少しでも建設費を削減したい。JR東海の主目的は東京、名古屋、大阪を結ぶことであって、中間駅は地域の利益のためにあるわけだから地域に負担してほしい。東北新幹線や九州新幹線のような国が整備計画を決定した整備新幹線であれば、自治体も路線の建設費を負担する。しかしリニアでは、民間主体なので自治体は負担せずJR東海だけが負担することになる。だから、せめて駅の費用は出してほしい。