神奈川県の黒岩祐治知事は「さがみ縦貫道路(圏央道神奈川県区間)」とリニア中央新幹線神奈川県駅を結びつけた、県央部と湘南都市圏の関係性強化に期待していると述べた。横浜駅、川崎駅という県東部に対して、県央部に南北軸を形成する。リニア中央新幹線の神奈川県駅を「北のゲート」、誘致活動中の東海道新幹線倉見新駅を「南のゲート」と位置づける、というものだ。
そのひとつの方策として、国の地域活性化総合特区「さがみロボット産業特区」を活用する。「さがみロボット産業特区」は圏央道沿線の12市町が参加し、ロボット関連産業の誘致、補助、連携をサポートする。神奈川県総合リハビリテーションセンター、プレ実習フィールド、JAXAを拠点とした取り組みもある。圏央道によって東京都西部、埼玉県、千葉県につながるだけではなく、神奈川県駅は品川駅から約10分、羽田空港から京急線の品川駅乗り換えで約30分となる立地で、ロボット研究を全国、あるいは世界に広げる。
長野・新潟と静岡を結ぶ位置にある山梨県の思惑
山梨県の長崎幸太郎知事も、南北軸の高速道路「中部横断自動車道」に注目する。「中部横断自動車道」は静岡市を起点とし、長野県小諸市を終点とする。途中の双葉~長坂間は中央自動車道を経由し、佐久小諸JCTで上信越自動車道に接続する。このうち静岡市の清水JCTと甲斐市の双葉JCT、南佐久郡の八千穂高原ICとは開通済み。長坂JCT以北は八千穂高原ICまでが未開通となっている。全線開通すると、太平洋側と日本海側を結ぶ路線になる。
リニア中央新幹線の山梨県駅は甲府駅の南側、双葉JCTから中央自動車道で約18km離れているが、中央自動車道と山梨県駅はスマートICで直結される予定でもある。山梨県は東西方向のリニア中央新幹線と南北方向の高速道路を交通結節点と位置づけた。北の長野県・新潟県と、南の静岡県を見据えた立地だ。その地の利を活かして新技術の実証実験の場として国内外に売り込む戦略を持つ。
実証実験の実例は、リニア中央新幹線の実験線である。さらに山梨県駅の南側にある「米倉山次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジ」で水素、燃料電池の関連産業を集積させている。静岡県裾野市でトヨタ自動車が手がける実証実験都市「Woven City」まで約1時間であり、カーボンニュートラルの世界的開発拠点となる。