Q 「誤った印象を与えた」大手メディアが相次いで“釈明”した背景は?
イスラエルとイスラム武装組織ハマスの衝突を巡って、さまざまな報道が出ています。10月17日に発生したガザの病院爆発について、発生当初、ハマス側の情報をもとに「イスラエルが空爆」と主要メディアが一斉に報じました。しかしその後、イスラエル政府による否定やメディア批判などを受けて、イギリスの公共放送であるBBCやアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズが、当初の報道について「(空爆の)原因は調査中であった」「(読者に)誤った印象を与えた」等と釈明をする動きがありました。
これだけの大手メディアが釈明に至ったことに驚きましたが、こうした動きについて池上さんはどうみられましたか?(30代・女性・会社員)
A 間違いを誠実に認めた、マスコミのあるべき姿だと思います
この態度には事実に正確であろうとする報道機関の良心を感じました。
当時の様子を振り返ってみましょう。イスラエル軍がガザへの容赦のない空爆を続け、「民間人にも犠牲が出ている」と報じられている最中に、「ガザの病院へのイスラエル軍の空爆で大勢の犠牲者が出た」とハマスが発表し、「空爆の跡」なる動画が公開されれば、とりあえずは「イスラエルが病院を空爆したとハマスが発表」というニュースを伝えるのはあることだと思うのです。
その後、イスラエルが「イスラム聖戦のミサイルの誤爆だ」と発表すると、それも報じましたが、扱いは小さくなりました。
でも、これでおしまいにしないで、各社は「爆発の形跡」を綿密に検証しました。イギリスのBBCは、検証の過程も報じています。その結果、ハマスの発表はフェイクである可能性が出てきたため、過去の自社の報道に頬かむりをせずに自社の失敗を認めたのです。
大手のマスコミだって間違えます。それを誠実に認めること。それこそがマスコミのあるべき姿だと思います。
病院を「爆撃」したのは誰か|池上彰