保険会社の営業体系というか、担当者しかお客さんのことを知らないってことが多くて、どういうお客さんとお会いしてどんな商談をしてるか、会社はほとんど知らないんですよね。もちろん最低限の報告はしているけど、私がお客さんのところへ行かなったら、その商談についてわからないままになることも多くて。私しか、連絡を取り合ってない状態なんですよ。だから、焦っちゃって。

「ギャーッ」とか「キャー」って悲鳴で「ハッ」と我に返って。泣いてる人もいた覚えがあるけど、みんなあきらめてなんかいないんですよ。

車内がどんどん熱くなる中、開いた窓に近い人から脱出

ーーみなさん、脱出しようと。

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あだん堂 「ボーン」ってトラックが爆発するような音が聞こえるし、炎で車内がめっちゃ熱くなってきたんです。だから、みんな必死ですよね。

 目の前で爆発してるから“もう終わりだ”感が凄かったけど、みなさん慌てつつも冷静に「どこか開くとこないですか!?」と伝言ゲームみたいにして声を掛け合ってました。でも「ドア、開けて!」って誰かが言ったけど、「開かない! ダメだ!」って返ってきて。人がいっぱいドアに乗っかってるので、その重みで開かないんですよ。「ドアがダメなら」って、みんなで窓を叩いたりガタガタやってみて。

 そうしてる間も車両が「ギギィ」とさらに傾いて、車内もどんどん熱くなって。もし車体が真横に倒れたら、窓やドアが天井になっちゃうから出られないじゃないですか。その恐怖も凄かったです。

 

ーー窓から出たのですか。

あだん堂 私が座っていた長椅子の窓が開いたんですよ。なんとか、人が1人通れるくらいだったと記憶してます。車両が新しかったのか、古かったのか、たまたま窓が開くタイプだったようで。
 
 それで私も「窓が開きました! 大丈夫です! 焦らないで、ゆっくりひとりずつで!」なんて、大声でみなさんに伝えて。それをまたみんなで伝言ゲームみたいに叫び合って。で、とにかく開いた窓に近い人から飛び降りて脱出しようとなったんです。たしか男性の方が先に出て、その方が後から飛び降りた人を支えてくれたり、引っ張り出してくれていました。

電車から離れて車両を見たら、涙がブワッっと出てきた

ーー何番目くらいに出られました?

あだん堂 早かったと思います。10番目以内だったと思うな。ただ、人が乗っかってるとどうしても動きが鈍くなるから、上にいる人から降りてもらったんですよね。そこは暗黙の了解というか、誰も文句は言わずに「近い人から、近い人から」とか言いながら降りてもらって。

ーー傾いている側から出るしかなかったわけですが、それも怖いですよね。車体が横転してしまう可能性もあるわけで。

あだん堂 傾いて不安定なのもあって、窓から人が飛び降りるたびに結構揺れるんです。これで「ガタン」と完全に横倒しになるといよいよ出口は無くなってしまうし、窓から出てる最中に横転したら潰される可能性もあるし、怖かったですね。

後日神奈川新町駅から返却された、当時履いていた靴

 パンプスもどっかに行っちゃってたので、出られたときは裸足の状態で。お腹側に背負ってたリュックだけを手にしてましたね。