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「すごいのは『不変』ということです。棋士って階級が上がると、自分は強いのだ、自分は偉いのだと思うのが普通です。自己顕示欲を持ち、自己肯定感を持つ。人として自然なことだと思いますけど、藤井さんからは全く感じません。他の棋士に対して語弊が生じてしまうかもしれませんけど、偉くなると言ってしまう言葉があります。相槌のひとつで分かります。でも、藤井さんは『ハイ』『へー』しか言わない(笑)。人は変わるものです。結果を残せば変わるのが普通です。藤井さんは『欲しいパソコンは買いますよ』と言いますが、いやいや、それ自分の研究のためじゃないですか、と。研究中に自分の前であぐらをかいてたって、もう別にいいじゃないですか。でも、ずっと正座しているのが藤井さんなんです」

王座戦で敗れた永瀬拓矢九段 ©共同通信社

来年の将棋界の話題は「誰が藤井からタイトルを奪うのか」

 永瀬九段は、「不変」に加えて、圧倒的な「努力」が藤井の強さを支えていると指摘する。

「(藤井さんは)『すごいな』というくらいの量の勉強をしている。オールイン(ポーカー用語で自分の持つチップを一度に全てベットすること)していることが分かるんです。藤井さんの立場にもなって、そのくらいできることはすごいことです」

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 取材を重ねれば重ねるほど、藤井聡太の強さには死角がない。

 来年の将棋界の話題は「誰が藤井からタイトルを奪うのか」に尽きる。

 藤井の強さの秘密を解き明かすために北野氏の取材はこれからも続く。

 北野新太氏が八冠棋士の実像を描いた「藤井聡太 肯定の天才」全文は、「文藝春秋」2024年1月号(12月8日発売)と「文藝春秋 電子版」(12月7日公開)に掲載されている。

文藝春秋

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藤井聡太 肯定の天才