実際、メジャー屈指の強打者ブライス・ハーパー(フィリーズ)は22年11月に「トミー・ジョン手術」方式の靱帯修復術を受け、わずか160日後に「DH(指名打者)」としてメジャーに復帰した。医療技術、リハビリ、トレーニング方法の進歩に伴い、同手術後としては最短での復帰が実現したこともあって、大谷の場合も順調に進めば24年3月28日の開幕戦に打者として出場できる可能性は十分にある。
その一方で、前回の手術から復帰後、投手としても稼働したわずか3シーズンで再手術となった事実は見過ごせまい。無論、どの投手にも故障のリスクはあり、再手術にいたった選手も少なくない。ただ23年の大谷の場合、WBCからフル回転でプレーし、開幕後は登板日にも打席に立ち、他の試合はほぼ「DH」としてフル出場を続けてきた。7月27日のタイガースとのダブルヘッダーでは、第1試合で投手として初完封し、わずか45分後に始まった第2試合で2打席連続本塁打を放つ離れ業もやってのけた。
故障で評価に影響はある? ない?
大谷の体に異変が生じ始めたのはその後だった。脚や右手、中指など複数箇所に相次いで痙攣を訴え、途中交代するケースもあった。大谷自身、原因は疲労と認識していたが、これは明らかな危険信号だった。それでも大谷は休むことなくグラウンドに立ち続けた。その都度、エンゼルスのフィル・ネビン監督(当時)は「彼とは毎日コミュニケーションを取っている」と説明した。しかし結果的に再手術という最悪の結果に繋がってしまった。プレー継続は大谷の意思を尊重したもので、選手は個人事業主とはいえ、球団の管理責任能力を問う声も多い。
23年シーズン後にフリーエージェント(FA)となった大谷の契約については、これまでメジャー関係者の間で8~10年の複数年契約で総額5億ドル(約725億円)以上の北米スポーツ史上最高額を含め、空前の契約規模になるのはほぼ確実と見られてきた。しかし今回の故障で評価が変わるとする見方が一部に出てきた一方、ほとんど影響しないと見る向きも依然として多い。また24年は長期契約ではなく、まずは短期契約を交わして、「二刀流」復活の際、改めてFAとなる可能性も捨てきれない。いずれにせよ投打両部門で「オプトアウト」(契約見直し)、細かいインセンティブを含む複雑な契約になるとみられる。