ある晴れた日、坂道を上って来る男・鐘谷志羅(かなたにしら)。ここはサナトリウム、結核療養施設だ。この時代、毒性の強い結核が流行している。ある医師は言う、きみがいま登ってきた坂道を生きて戻っていったものはまだいない、と。様々な事情を抱えていそうな利用者と職員に出迎えられるなかで、志羅はある女性と目が合う。幾星霜を経て再会した恋人同士のように見つめ合う2人。その女性、小夜は、志羅が子どもの頃に夢中で見ていたテレビドラマの少女剣士と瓜2つで……。
草彅剛さんが主演を務める舞台『シラの恋文』で、大原櫻子さんは、志羅と出会う運命の女性・小夜を演じる。
「小夜という名前から、最初は可憐でおしとやかな女性と思い込んでいたのですが、“あの子の瞳は少年のような魅力がある”“一昔前の女優さんのようだ”と周囲に言われる姿に、凜とした女性を想像するようになって。少女剣士を役作りの軸に据えています。小さい頃に好きだったアニメ『セーラームーン』のヒロインをヒントにして(笑)。それと“母性”。再び戻ることの叶わないサナトリウムの人たちを包み込むような女性であることを大事にしています」
演出を務める寺十吾(じつなしさとる)さんには、「陰に入らないで」とアドバイスされたという。
「『よく泣きの芝居に入るから、そっちに行かないでくれ』と。ちょっとヒロインチックになりがちなんですね。そうじゃなくて、もっと自分の感情を相手にぶつけて、自分の意思は正しいんだっていう感じで立ってくださいと」