「2049年には人類の4人に1人がアフリカ人になり、この比率は2100年にはほぼ4割に達する」。国連経済社会局人口部の最新予測だ。この数字はあちこちで引用されるが、私は、この見積もりは過少だと考えている。

 世界すべての国の人口統計を揃え、各国別に長期予測を作成して人類の総数をカウントする――この壮大な事業において国連人口部に敵う機関は世界中どこにもない。国連予測が使われるのは、これが唯一無二の予測だからである。

©AFLO

 だが、日本の人口予測に関しては国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の予測が専ら使われ、国連予測が引用されることはない。なぜなら両者が大きく異なっているからだ。IPSS最新予測では2070年の日本人口は8700万で合計特殊出生率(TFR)が1.36なのに対して、国連予測は8950万でTFRは1.51とされている。

ADVERTISEMENT

 国連はこれまでも日本の出生率は直(じき)に回復すると想定し、将来人口をIPSSより常に多めに予測してきた。その結果、予測を外し続けてきたのである。この事情は日本に限ったことではなく、TFRが人口置換水準、およそ2.1を割ったすべての国について同水準への復帰シナリオを作成してきた。確率論の手法を取り入れるようになった2010年版からはさすがに単純一律な復帰予測ではなくなったが、それでもTFRが上昇反転するという想定は維持されている。だから、国連人口部の先進国人口予測は毎回上振れする。

アフリカの人口統計は“国連の作品”

 一方アフリカに関しては、TFRは即座に低下トレンドに乗り世紀末までには人口置換水準に落ち着くと想定している。出生届や死亡届、人口センサスが整備されていない開発途上国、なかでもサブサハラ・アフリカの人口推計・予測に関して、国連は試行錯誤を続けてきた。各種サンプル調査を通じて人口情報を集め、推定モデルを作成して精度を高めてきたのである。アフリカの人口統計は“国連の作品”といえるほどだ。