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人口集中がもたらすもの

 通常引用されるのは出生率中位予測だが、国連人口部はほかにも、出生率低位と高位、出生率一定、死亡率一定など複数シナリオを公表している。このなかで、今世紀に入ってからアフリカや日本の実態にもっとも近かったのは出生率一定シナリオだった。つまり、日本においてもアフリカにおいても出生率は、想定ほど変化しなかったということだ。そこで試みに、TFRが低下している最中の国については中位予測を、TFRが人口置換水準を下回っている国と、本格的低下が始まっていないアフリカ諸国については出生率一定予測を組み合わせて世界人口予測を作り直してみると、2086年にはアフリカの人口がおよそ65億人となって、人類総数の50%に達する。

 人類の2人に1人がアフリカ人になる――まさに未曾有の事態だ。20年を超えると人口予測はほとんど当たらないのだが、それでも、現在のトレンドはその方向を向いている。そのなかでなにが起こると予想されるか。

人口縮小社会が経済力を維持していくためには…

 第一の懸念は食糧需給で、そのことはウクライナ戦争で既に垣間見えている。アフリカ大陸は水資源が決定的に不足していることから、農業増産には超えられない限界がある。増えていくアフリカの人口を支えきるだけの食糧増産を、はたしてどの国が賄えるか。また日本のように輸入によって食糧供給を維持している国は、タイトになっていく国際供給体制のなかで自給率を高められるのか。

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 人口と経済力の偏在が進むと移民圧力が加速的に強まる。その反発としてナショナリズムが高まり政変につながる動きを、我々は既にみている。世界の移民分布における希薄地帯は東アジアだ。人口減少が始まった東アジアに、アフリカ移民を受容して活用する社会的能力が生まれるだろうか。

 人口縮小社会が国外のダイナミズムと市場を取り込んで経済力を維持していくためには、まず世界の姿を知ることだ。産業力の弱いアフリカの域外依存度は、一貫して高まっている。その商機を認識できているだろうか。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。