「どこかの公園に裸の女性を立たせてね、いや、間違いなく裸ですよ? 裸なんだけど、それを超望遠で放送するってのをね、やって」(デーブ・スペクター)
平成の時代は、コンプライアンスなんて言葉はなし。今よりもめちゃくちゃだったテレビ業界の思い出を紹介。脳科学者の中野信子氏とデーブ・スペクター氏の対談を掲載した新刊『ニッポンの闇』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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今よりもムチャクチャだったテレビ業界
デーブ・スペクター(以下、デーブ) だって、中野さんはテレビ見てなかったんだから知らないだろうけど、昔のテレビはムチャクチャでしたよ。
中野信子(以下、中野) そうらしいですね。
デーブ テレビって前はね、怒られてもいいやっていう業界だったんですよ。『11PM』って深夜番組の次が『EXテレビ』で、この番組は1990年から放送されてたんだけど、「生放送で初めてのヘアヌード!」とかって告知したことがあったんですよね。もうみんな何だろうと思うわけじゃない?
中野 ああ、「ヘアヌード」(陰毛がモザイク等で修整されて)って言葉が刺激的だった時代ですよね。ヘアが解禁されたのは篠山紀信さんが撮った宮沢りえさんの『Santa Fe』(1991年)くらいからだそうですけど。
デーブ そう、だからヘアヌードがまだまだやばい時期ですよ。テレビの生放送なんかでやったらどうなるか。それをさ、やるって言うんだから視聴率だって上がるでしょ?
でもいざ放送する時は、どこかの公園に裸の女性を立たせてね、いや、間違いなく裸ですよ? 裸なんだけど、それを超望遠で放送するってのをね、やって。
中野 公園に立たせるっていうのは気になりますけど……でも、肝心のところは見えないですよね(笑)。
デーブ 見えないよ。だって半キロとか1キロとか離れてるし。人がいるなってくらい。
中野 当時は解像度も悪かったでしょうしね。それなら「わいせつ物頒布等の罪」にも当たらないのか。
デーブ でも嘘じゃないんだよね。嘘じゃないのよ。そういうのを平気で放送してたし、ギリギリのルール破りにむしろ燃えてたというね。そういう感じだったんだよね。
中野 今はもうできないでしょうね。
デーブ 僕、日本に来たばっかりの時、本業はアメリカの番組に日本の番組紹介することだったんですけど、それまでは日本のサラリーマンのイメージは勤勉でまじめで。それが日本のバラエティ見たら、あまりにもギャップがあって。だってその頃、日本で野球見に行くとみんなスーツにネクタイなんですよ?
中野 ああ、そんな時代。