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第13位『小説家の映画』(39点)――韓国の鬼才ホン・サンスならではの妙な会話劇
休筆している作家の視点から物語は始まる。彼女が休業中の女優と出会い、ふとしたことから映画を撮ろう、ということになって物語が展開していくわけだが、大仰な演出はない。
『クレアのカメラ』(18年)、『あなたの顔の前に』(21年)と同様「相変わらずのホン・サンスのワンシーンワンカット映画」(尾崎将也)なのだ。
街の音、くだらない会話、そして一瞬ふたりの間に流れる変な空気…。「人が会い、ただ話して酒を飲んでいるのを暗がりでじっと観ていると、変な気分になって面白い」(石山蓮華)作品。
第14位『aftersun/アフターサン』(35点)――子どもの頃には分からなかった父の姿に募る切なさ
離婚により離れて暮らす父とふたりで、ひと夏を過ごすことになった11歳のソフィ。20年後、父と同じ年齢になったソフィは、あの夏のビデオテープを見返す。
ユーモアがあり、大好きだった父。だが、そこには幼い頃には分からなかった父の揺れ動く感情が映し出されていた。
初長編作品ながら、シャーロット・ウェルズ監督による儚くも美しい映像が、眩しい日々に漂う寂寥感と大人になったからこそ分かる切なさを掻き立てる。「作り手の意図を感じず、彼女の記憶に没入するような体験ができました」(中島歩)