時間は「価値にして返す」もの
澤 それってすごく大事なマインドセットで、アメリカの企業では1時間のミーティングが45分で終わったとしたら、“15 minutes back to you”(15分あなたに返すよ)という言い方をよくするじゃないですか。時間は借りているという概念ね。日本のビジネスフレーズだとよく「お時間頂戴します」って言うけれど。
牛尾 時間はあげないですよね、貸すものであって。
澤 そう、貸しているだけだから「価値にして返してよ」と思うし、僕のためにただ単に列席している人がいたら、時間を借りるのは申し訳ないから、出て行って有効に使ってほしいと本気で思うんだよね。エンジニアの現場ではそういう考え方がベースラインにあるわけでしょ。
牛尾 無駄な会議への出席は誰もやっていないし、面倒な準備は一切しないし、極力持ち帰り仕事は生じさせないやり方ですね。あと、しゃべらない人は誰もいない。みんな英語で超高速にトーンアップしてしゃべり倒すから、話の継ぎ目がなくて非ネイティブの僕からすると、割って入るのが難しいほど(笑)。
僕ら日本人は、発言者がしゃべり終わってから話すじゃないですか。でも、ここではみんなディスカッションでも、常にオーバーラップして突っ込んでくるコミュニケーション。だからものすごい効率がよくて、その場でビシッと何かが決まって終了。
澤 そうそう。決めるってことに対する執念がすごくて、誰がいつまでに何をするかが明確に決定されていく。それが、本来の会議の役割だからね。
コミュニケーションのスタイルの違いをめぐって、アメリカのMBAで言われている面白い小ネタがあって、欧米人の会議をスポーツでたとえるとバスケットボールなんです。ボールが常に目まぐるしく回っている状態。
牛尾 確かにそんな感じですね!
日本人のコミュニケーションをスポーツに例えると…
澤 次に、BRICS。ブラジル、ロシア、インド、チャイナ、南アフリカはラグビーと言われているんですね。人が喋ってたら、タックルしてボールを奪い取ろうとする(笑)。ディスカッションでも相手から主導権を奪おうとするアグレッシブな話し方です。
だからインド人ばかりの会議で、せーのでみんなしゃべり始めると、最後まで喋り続けた奴のアイデアが採用される! インド人の会議で最も重要なのは、肺活量だって話もあるほど(笑)。
牛尾 アハハハ、確かにそういうノリですね! 僕の部署も半分くらいインド人なので、すごくわかります。
澤 で、クエスチョン。日本人は何だと思います?
牛尾 なんだろう、ゴルフかな?
澤 答えはね、ボーリング。順番が巡ってくることが前提で、フレームが決まってる。私の番、あなたの番が決まっていて、そのタイミングで、発言をするような会議が日本では一般的。マイクロソフトで23年働いて、マネージャーを15年やった僕のような人間ですら、とくに英語での発言だと、人の話にカットインしづらいのはあります。
牛尾 わかります。そのあたりグローバル企業の文化は、会議でもディスカッションでもプレゼンでの質問とかだって、まったく遠慮がない。
澤 コミュニケーションにおける遠慮なんて、百害あって一利なしですからね。遠慮はないけど、みんな人を助けることに関してポジティブですよね。