牛尾 澤さんは、ビル・ゲイツが授与する「Chairman's Award」を受賞するほど優秀でしたが、僕がアメリカに行ったあと、マイクロソフトを辞めてご自身の会社を立ち上げて多方面で活躍しています。澤さんはVoicyという音声メディアで毎日いろんなトピックスで話していますが、日々をエンジョイされている様子が伝わってきてすごく楽しい。そんな僕の大恩人が澤円さんというわけです。
自分ができないことに無理に時間をかけない
澤 ご紹介ありがとうございます。『世界一流エンジニアの思考法』を大変興味深く読ませてもらいましたが、まず第一にこれは「人は頑張ればどうにかなる」という勇気を与えてくれる本。ようは自分にできないことはできないと現状認識して、無理に時間をかけずにさっとエキスパートの助けを求めろ、と。
牛尾 ズバリ核心を突いてくれました。澤さんよくご存知だと思うけど、僕は三流エンジニアでADHDだから長年ずいぶん苦労してきたけど、アメリカに来てからすごく居心地がいいんですね。訳わからない仕方で無理をしなくていいから。
澤 僕もADHDでずっと自己肯定感が低かったから同じ仲間としてすごく気持ちがわかるんだけど、日本の教育機関や企業って、苦手なことを克服させようとするでしょ。もちろんトライするのは悪いことじゃないけど、社会人としてなんでも平均的にこれ以上はできないといけない、みたいな押し付けは根本的に違うと思う。
人はそれぞれ違う生き物だし、大切なのは生産性高くよい結果を出すことであって、結果を出すために各人のやり方で効率よくやったほうが合理的なんだよね。
牛尾 澤さんが自分と同じ特性をもつ仲間なのは昔からずっと心の支えになってきたのですが、おっしゃるように、インターナショナルチームでもまれてみると、日本の企業の「常識」って一体なんだったんだろうと気づかされました。
優秀な人たちが非効率なことをやっている日本的会議
澤 たとえばその最たるものは会議。本書でも「会議の準備と持ち帰りはやめるべき」と書いてあったけど、僕が今いろんな日本企業の顧問や社外取締役をやっていると、めちゃくちゃ優秀な人たちが非効率なことをやっている現場によく出くわします。
僕ごときのために、会議の資料を物すごい枚数パワポにまとめてきて、それを延々と朗読するパターンが非常に多い。会議で物事を決める時間がなくなるくらいに。
牛尾 それじゃ、意味ないですよね。
澤 会議をやると、たいていしゃべる人は、1~2人のお偉いさんだけで、とり囲んでいる7~8人のスーツ組は発言しない。長く説明されて、「ところで僕以外の人は、これ初めて聞くんですか?」って言うと、みんな資料を作るプロセスに参加しているから全員わかっていたりする。「内容を把握しているし、とくに話す予定がないんでしたら、今すぐ退出して、好きに時間を使って頂いていいですよ」と僕は言うようにしていますが。
牛尾 僕の部署では週2回定例会があるんですが、マネージャーが「出なくていいよ」と言ってくれます。進捗を話し合うだけだから、「ツヨシは技術ディスカッションだけでいいから、こっちの時間は返すよ」って。