玄関には靴が。アカネさんが2階に上がると…
約4時間がたった17時30分ごろ、担任Zから母親のアカネさんに「宿題の確認をしましたが、息子さんは提出してないんです。家で宿題していますか? 教室にカバンはあるのですが、いなくなりました。どこか行きそうなところに心当たりはありませんか?」と電話が入った。
アカネさんはまだ職場にいたため自宅に電話をしたが、サトルさんにつながることはなかった。18時ごろ、担任Zは様子を見にサトルさん宅へ向かった。やがて帰宅したアカネさんと担任Zが自宅に入ると、玄関にはサトルさんの靴が。しかし声をかけても返事はなく、1階には見当たらない。そしてアカネさんが2階へ上がると、サトルさんが首を吊っているのを目撃した。
「『起きて! どうして!』とパニックになりました。その場にいた担任Zは『ごめんね』『みんな一緒だったんです』とよくわからないことを言っていたのを覚えています。宿題について担任から聞いた後だったので『真面目な子だったから宿題を出せなかったことを苦にして?』『いやそんはずが……』と考えがまとまりませんでした。
しかし最後に息子と話した担任Zは告別式が終わっても何も説明せず、徐々に学校や担任への不信感が募っていきました」
告別式の後、アカネさんは自身を奮い立たせて真相究明のために動き出した。
「(宿題を忘れたことによる)叱責だけで自殺するだろうか? と思いました。その後、校長は『進路で悩んでいた』と説明したんです。これでは辻褄が合わない。すると、地域の人が、文科省が定めた『学校事故対応に関する指針』や『子供の自殺が起きたときの背景調査の指針』について教えてくれました。弁護士を探しました。弁護士の同席のもと、詳細調査をお願いしました」(アカネさん)
サトルさんはバスケットボール部では,夏休みの大会で引退するまでレギュラーとして活躍していた。背が高く、釣りや自然が好きで活発な面がある。自殺を含め、死に関する話をしていた様子もない。
「中3になってすぐの頃、サトルは『担任が嫌なので、クラス替えをしてほしい』と言っていたんです。あまり、誰かについて批判的なことは言わなかったので驚きましたが、その時は特別なこととは思わず、『それは難しいと思うよ』と言ってしまいました。しばらくしてまた『担任の先生が嫌だ』と言った時も、『中学生最後だから今年は先生とではなく、友達と思い出をつくる方が楽しいよ、社会に出たらもっと色んな人がいるよ』って言ったんです。その後は担任について何か言うのは聞いたことがありません。あれが深刻なSOSだったのだと思うと、後悔してもしきれません」(アカネさん)