来週最終回を迎えるNHKの大河ドラマ『どうする家康』では、クライマックスとなる大坂の陣で徳川家康(松本潤)に抵抗する豊臣秀頼の生母・淀殿を、北川景子がその母親のお市の方に続き1人2役で演じている。

 いまから36年前、1987年の大河『独眼竜政宗』では、淀殿に樋口可南子(当時29歳)が扮した。樋口演じる淀殿は妖艶で、関ヶ原の合戦前夜には、臣下の石田三成(奥田瑛二)を色香で惑わし、家康の首を取ってくるよう命じるシーンもあった。大河ドラマの淀殿役のベストを決めるファン投票があれば、樋口は確実に上位に入ってくるはずである。

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樋口可南子65歳に

 その樋口はきょう12月13日、65歳の誕生日を迎えた。新潟出身の彼女は、高校時代には、絵を描くのが好きだったので美術部に入るとともに、演劇部にも所属していた。もともと鏡で顔を見ては《「自分が悲しいときはどんな顔してるのか」とか「人間って怒ったときはこういう顔になるのか」って、自分研究がすごく好きで》、演技には興味があったらしい(『週刊文春』2002年5月30日号)。

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 俳優の道に進む直接のきっかけはスカウトである。東京の女子美術大学在学中、銀座の甘味処「立田野」でアルバイトしていたところ、TBSのドラマのスタッフがプロデューサー以下何人かで来て、昼の帯ドラマ枠「ポーラテレビ小説」の主演オーディションを受けてほしいと誘われたのだ。最初に受けた『夫婦ようそろ』は時代物で長身(165センチ)を理由に選から漏れてしまうも、局預かりとなりTBSでしばらくバイトをしながら次の機会をうかがった。こうして次に受けた『こおろぎ橋』(1978~79年)のオーディションで合格し、女優デビューを果たす。

デビュー当初は「清純派」

 デビュー当初は清純派として売り出したが、21歳のとき、映画初出演となる『戒厳令の夜』(1980年)でヌードを披露して反響を呼ぶ。以来、『北斎漫画』(1981年)、『卍』(1983年)、『ベッドタイムアイズ』(1987年)などの映画で、濡れ場もいとわない大胆な演技で話題をさらい続けることになる。

映画『ベッドタイムアイズ』は、作家・山田詠美の同名小説が原作。黒人男性との激しい恋愛を描いた(『「ベッドタイムアイズ」写真集』講談社、1987年)

 どんな役にも果敢に挑戦してきた理由を、のちに彼女は《とにかく負けん気ですね。こればっかりは持って生まれたものだと思います。普段はあんまり出てこないんですけど、女優という仕事になると急に出てくる。自分がおもしろいと思ったもの、自分にとってハードルが高いものにチャレンジして、越えたくなるようなところがあるんです》と説明している(『週刊朝日』2012年1月6・13日号)。