睡眠不足と肥満には相関関係があることが知られている。医師の奥村歩さんは「睡眠が不足すると、食欲増進ホルモンのグレリンが増加、食欲抑制ホルモンのレプチンが減少し、基礎代謝量が減ってしまう。さらに昼間に眠気を感じると運動不足に陥りやすい」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、奥村歩『スマホ脳・脳過労からあなたを救う 脳のゴミを洗い流す「熟睡習慣」』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

睡眠不足が肥満をまねく

「睡眠時間が短い人ほど太る傾向がある」という調査報告があります。

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富山県の児童およそ1万人を対象にした調査では、8時間以下しか眠っていない子どもは、毎日10時間以上睡眠をとる子どもに比べ、肥満の度合いが3倍近く高くなっていました。

同じような報告は世界各地で見られます。また、大人の場合も、同様の傾向を示しています。

「睡眠不足が肥満をまねく」のは、次の2つの要因があるからだと考えられています。1つは食欲に関係するホルモンの変化。もう1つは運動不足です。

私たちの身体には、食欲をコントロールする2種類の生体ホルモンがあります。

胃から生成される食欲増進ホルモン「グレリン」は、体内のエネルギーが不足したときに、食欲を増進し、エネルギーを取り込むよう促します。

写真=iStock.com/South_agency 睡眠不足が肥満をまねく(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/South_agency

食欲を抑制するホルモン「レプチン」

一方、脂肪細胞内で生成される食欲抑制ホルモン「レプチン」は、食欲を抑え、エネルギー代謝を促す働きを持っています。

ただ、睡眠が不足すると、グレリンが増加し、レプチンが減少します。

その結果、グレリンの働きで食欲が増進し、レプチンの減少で代謝も落ちるため、肥満につながるのです。

もう1つの要因として、睡眠不足が運動不足を招くことも挙げられます。

睡眠不足になると、交感神経が活性化されず、昼間でも眠気や疲労感を感じてしまい、運動をしなくなります。その結果、肥満がますます進行してしまうのです。