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インドで仏教徒が増えている理由

――昔よりも人との関わりが薄くなってきているのかもしれません。インドも中流階級が増えているそうですね。

佐々井 インドと一口に言っても14億人いるし、宗教や地域、階級で考え方も違う。インドも経済成長によって豊かになっているし、日本と同じように人情が薄れてきている面もあるだろう。それでも、さっき言ったようにインドは信仰の民だから、どんな国の人が来ても憐みを持って助けてくれるし、貧しい人どうし助け合っているように俺は思うよ。

駐車場で着替える佐々井さん。求められたら身ひとつで駆けつける(写真提供:白石あづさ)

――インドの仏教徒は、ほとんどがアウトカースト出身の貧しい人々ですよね。

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佐々井 そうだ。日本でも知られているようにインドには大まかに言って4つのカーストが未だにあるんだけど、仏教徒はその最下層の奴隷カーストにすら入れないアウトカーストの不可触民(ダリット)出身だ。触ると穢れるって言われてね。インド14億人のうち約2億人いると言われる。

――その人たちが仏教に改宗しているんですね。今、仏教徒はどのくらいですか?

佐々井 政府はとても少なく見積もって人口の1%とか言っているけれどそれは全く違う。ちゃんと調査していないんだ。半世紀以上も前、50〜60万人だった仏教徒は今、1億5000万人を超えておるんじゃないですか。

――爆発的に増えていますが、今も根強くカーストは残っていますよね。

佐々井 カーストは法律で禁止されているんだがな。不可触民出身で初めての法務大臣になったアンベードカル博士という人がいたのだが、彼の作ったインド憲法(1949年)では、すべての人が平等なんだよ。

 でもヒンドゥ教と密接に絡み合ったカースト制度はすぐになくならない。だから博士は1956年の年末、自分の支持者50万人の不可触民とともに平和と平等を重んじる仏教に望みをかけて改宗したんだ。

 俺がナグプールに来たのは博士の死後10年以上も経ってからだったんだけど、当時、仏教徒には救いが何もなかったんです。その時は高カーストのやつらに叩かれたり殴られたりしていた。抵抗すれば殺されることもあったし、何をやられても泣き寝入りだったんだ。

 でも今はどんな貧しい村に行こうが、小さな村に行こうが、大人も子供も男も女も誰もが抵抗できる。声を揃えて、雄々しく高らかにね。