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「日本人の考え方は通用しない」若者は爆弾ベルトを身体に巻きつけ…自衛官がパレスチナの町で目撃した“光景”とは

2023/12/19

genre : ニュース, 国際

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 パレスチナ自治区ガザ地区を巡る戦乱が始まって2カ月以上が過ぎた。イスラエル軍はガザ地区南部の中心都市ハンユニスに侵攻。ガザ地区住民の8割にあたる180万人が家を追われ、難民と化している。イスラエルのネタニヤフ首相は侵攻前から、ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」について「血に飢えた怪物を根絶やしにする準備はできている」と語ってきた。

 だが、陸上自衛隊の近藤力也元1佐は「本当にそんなことが可能だろうか」と自問する。20年前に自身が経験したパレスチナの人々との交流が、「ハマスを根絶やしにはできない」という結論に導くからだ。近藤氏は「ましてやハマスはパレスチナを代表している訳ではない。ハマスを根絶やしにできたとしてもパレスチナ問題は解決しない」と憂いを強くする。

隊長車と近藤力也氏。UNDOF司令部があるシリアのキャンプ・ファウアールで

パレスチナ出会った人々

 2003年1月、近藤氏は第15次ゴラン高原派遣輸送隊長としてシリアとイスラエルの国境地帯に広がるゴラン高原に派遣された。そこでは、国連兵力引き離し監視部隊(UNDOF)が国連平和維持活動(PKO)の一環として、イスラエルとシリア両軍が衝突しないよう目を光らせていた。近藤氏は同年9月までの約半年間、主にイスラエル側にあるキャンプ・ジウアニの宿営地とゴラン高原やUNDOF司令部があるシリア側のキャンプ・ファウアールを往復する日々を送った。

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 ある日、約50キロ離れたシリアの首都ダマスカスとゴラン高原の中間ほどにある町カナシシに、隊長ドライバーを兼ねる部隊付のドクターと一緒に立ち寄った。古い汚れた石造りの建物が建ち並ぶ小さな町だった。過去、2度ほど、そこには立ち寄ったことがあった。建物の前に薄汚れたテーブルと椅子を並べただけの食堂が出すケバブを食べながら休憩するためだった。

当時のUNDOF司令部に掲げられたマーク

 3度目に訪問したときだった。食堂にいた近藤氏たちに突然、ナイフを持ったアラブ風の若者2人が近づいてきた。若者は「お前は国連の要員か」と尋ねた。「そうだ」と答えると、「国連の要員でここに立ち寄るのは、お前たちだけだ」と脅すように言った。「ここがどんな町なのか知っているのか」と畳みかけてきた。