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翌元和3年(1617)、本多家は姫路(兵庫県姫路市)へ移封となり、翌年に忠刻の長女の勝、元和5年(1619)には長男の幸千代を生んだ。これでやっと幸せが訪れるかと思いきや、元和7年(1621)、幸千代は数え3歳で没し、寛永3年(1626)には夫の忠刻も、そして母の江も死没。勝とともに本多家を離れて江戸城に入り、出家して天樹院と名乗った。そのときまだ、数え30歳にすぎなかった。

その後、40年を生きて寛文6年(1666)2月に江戸で死去したが、30年の前半生の不幸は、たしかにドラマの千の悲しげな表情が象徴している。

香原 斗志(かはら・とし)
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。