イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 前文科事務次官の前川喜平さんが今年二月、名古屋の市立中学に講師として招かれた。その授業内容に対し執拗な問い合わせが文科省から市教育委員会に入った件は、やはり自民党文教族が関わっていたわね。文科省に照会した赤池誠章参院議員は「各省庁に照会して事実確認を求めるのは日常業務の一環。圧力に当たらない」と宣うけど、彼は自民党の文部科学部会長。質問内容について文科省に意見した池田佳隆衆院議員は部会長代理よ。「自分が意図せずとも受けた相手が圧力を感じる」――これ、パワハラの基本的構造とピッタリ重なる! 林文科相も「必要に応じて教委に問い合わせや事実確認をするのは通常のこと」と仰るけど、然るべき肩書や権威を持ったら、自らの言動が圧力になる可能性を自覚し自重すべき。

 議員たちの行動も、それに屈した文科省の対応も、明らかに教育基本法第十六条「教育は、不当な支配に服することなく」に抵触している。自殺者を出すような「いじめ」重大事案に対し、文科省が各教育委員会に指導を行うことはあるけれど、一授業の内容や講師の人選にまで介入するのはどう考えてもやり過ぎ。

 文科省からのメールにある、前川さんへの侮辱的文言もひどいワ。「事務次官在任中に出会い系バーの店を利用したことが公になっています」とあるけど、その後、前川さんの行動は貧困調査など良心的な理由によるという話も出ているのに。名誉毀損レベルね。

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 でも今回、文科省の質問に対し毅然と的確に回答した名古屋市教委、録音データを提出しなかった中学校長、「やり過ぎ」と文科省を批判した名古屋市長、市教委の対応に敬意を表し全力でのサポートを表明した愛知県知事には拍手! 愛知は元来、自主の精神に富む土地柄。教育に携わる者の良心と気骨を示してくれた。全国の現場の先生方の手本と励みになるといいわね。