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19歳で出産、生後9ヶ月の息子が“脳性まひ”に…「会話も食事も排泄も難しい」障害児を育てる母親(44)が抱えていた葛藤

畠山織恵さんインタビュー #1

2023/12/24
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「大した事ないおばさんやん」女子高生から言われた衝撃のひと言

――先輩ママだけでなく、女子高生との出会いも、畠山さんが自分を見つめ直すきっかけになったそうですね。

畠山 私はもともと、おしゃれをすることが大好きでした。でもママになったからには、子ども優先でいなきゃいけない。そう思い、おしゃれを諦めていた時期がありました。

 そんなとき、買い物中に2人組の女子高生とすれ違って。私のことを見てくるなと思ったら、突然「大した事ないおばさんやん」って言われたんです。

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――いきなりそんなことを言われたら、ショックですよね……。

畠山 彼女たちの前後のやりとりからの想像ですが、女子高生の1人が「赤ちゃんを連れた、キレイなママがいる」ともう1人の子に話していたのかなと。でも実際に近くで見た私は、ノーメイクで髪は適当にくくり、ダボダボのスウェットを着て、見るからに疲れ果てていた。それで、その言葉が出てきたのだと思います。

 自宅の鏡を見ながら女子高生の言葉を思い出し、悔しくなりましたね。「こんな自分になりたくて家を出たんじゃない。自分のことを大切にしたいから、家を出たはずや」って。

 それから、久しぶりにしっかり化粧をして、丁寧に髪を巻いて、お気に入りの服に着替えて、ピンヒールを履いて出かけてみたんです。そしたら、いつもより気持ちが軽く、道ですれ違う人たちも優しく見えて。そこで、「世界の色を決めていたのは、私だったんだ」と気付きましたね。

ピンヒールを履いて亮夏さんと出かける畠山織恵さん(写真=畠山織恵さん提供)

 母であるからには、子どもの健康や安全には配慮しなきゃいけません。でも、どんな役割を背負っていたとしても、自分らしさを手放す理由にはならない。子どもだって、大好きな親から「あなたのために自分を諦めてきた」とは言われたくないはずです。

撮影=橋本篤/文藝春秋

ピンヒールで車椅子を押す

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畠山 織恵

すばる舎

2023年7月7日 発売

19歳で出産、生後9ヶ月の息子が“脳性まひ”に…「会話も食事も排泄も難しい」障害児を育てる母親(44)が抱えていた葛藤

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