畠山 脳性麻痺って言葉は聞いたことがあったけど、具体的にどんな病気かはまったく知りませんでした。夫はショックが大きかったようで、自宅でひっそり泣いていましたが、私は「訳が分からない」という感情のほうが大きかったかもしれません。その一方で、これまで漠然と感じてきた違和感の正体が分かり、ほっとする気持ちもありましたね。
両親は「医者を訴える」とひどく怒っていたが…
――脳性麻痺とは、どんな病気か教えていただけますか。
畠山 自分の意思とは無関係に力が入りすぎたり、逆に力が入らなかったりする障害です。亮夏の症状は、意思と無関係に力が入るタイプで、喋ろうとすると足がバタバタしたり、何か物を掴もうとすると反対方向に体が反り返ったりしてしまいます。
常に全身の筋肉が緊張していたからうまく眠れないし、ミルクもスムーズに飲めないし、おもちゃを掴んで遊ぶこともできなかったんです。歩くことはもちろん、私たちが何気なくしているおしゃべりも食事も排泄も、筋肉をうまく動かせない亮夏には難しい。だから、24歳になった現在も、誰かに介助してもらわないと日常生活を送れません。
――なぜ医師の診察を受けていたにもかかわらず、早期発見できなかったのでしょうか。
畠山 きっと、お医者さんも亮夏の様子に違和感を抱いていたと思うんです。でも、月齢が低いとうまく診察ができなかったり、できる検査も限られていたりする。明確な根拠がないまま診断を下すのはリスクが大きすぎるから、様子を見ていたんじゃないかなって。
――脳性麻痺の診断に対して、周囲の反応はどうでしたか。
畠山 夫の両親は、「みんなで力を合わせてがんばろう」と励ましてくれました。一方で、私の両親、特に父は「様子見しようと言っていた医者を訴える」とひどく怒っていましたね。でも、私はどうしても訴える気にはなれませんでした。
――それはなぜでしょう?