世界で活躍する25歳のピアニスト、藤田真央さん。実は将棋好きな藤田さんが、かねて会いたいと思っていた棋士が、“ひふみん”こと加藤一二三さんでした。「自分は負けず嫌いではない」とともに語る2人が見てきた、第一線の世界とは。『週刊文春WOMAN2024創刊5周年記念号』から一部編集、抜粋の上紹介します。
◆ ◆ ◆
藤田 ずっと加藤先生にお会いしたかったんです。先日も秋の園遊会でのご様子を拝見しました。
加藤 はい、あの、藤井聡太さんと猫の話題を準備していったんです。愛子さまは猫を2匹飼っているとうかがったものですから。
藤田 私も実家で猫を3匹飼っているんですよ。
加藤 猫は自分の名前を憶えていて、5歳児程度の知能があるんだそうです。藤井聡太さんはいま話題の方ですから、話のお題にいたしました。皇族方ともお話ししましてね。三笠宮瑤子殿下は、お父様の三笠宮寬仁さまから生前、玉を囲う「穴熊」の戦法を教わったそうですよ。
藤田 それは渋いですね。
ピアニストとしての節目にはモーツァルトがあった
加藤 私は2023年に入って、なぜかたまたまモーツァルトの『ピアノ協奏曲第24番』を聴くようになりまして。
藤田 そうなんですか! 24番は私も思い入れのある曲です。これまでのピアニストとしての節目にはモーツァルトがあって、クララ・ハスキル国際ピアノコンクールのファイナルでの演奏曲が、まさに『ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491』でした。
加藤 私はタイトル戦の合間に、『戴冠ミサ曲』や『レクイエム』をよく聴いていました。娘の百合がミッションスクールに通っていて、『戴冠ミサ曲』の合唱を聴く機会がありましたし、曲の背景を調べる宿題に一緒に取り組んだこともありました。
藤田さんのご著書『指先から旅をする』にもモーツァルトとのゆかりが書いてありましたね。冒頭に演奏した国を示す世界地図が載っていて、本当に世界中を旅しているのがよくわかるのですが、イスラエルでの公演の話はとても興味深く拝読しました。私は洗礼を受けたカトリックの信仰者でもありますので。
藤田 私にとってもイスラエルでの公演は忘れられない経験のひとつです。初めて行ったのが2022年で、2023年の7月にもテルアビブでの公演がありました。2024年1月にもコンサートの予定が入ってはいるのですが、イスラエルがご存知のような状況ですので、実施できるかどうか不透明です。