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 この状況を好機と捉えたのか、むしろ今後制作・公開を控えるサメ映画は「海ザメ映画」が多いように思える。普通が逆に新しいのだ。それを象徴するのが2024年に撮影を開始する『アルファス(原題)』という作品だ。とある海岸でホホジロザメが人を襲う事件が頻発。凶悪な人食いザメに対処すべく解き放たれたのは、かつて人を襲ったために隔離されていた凶暴なシャチだった――。海洋生物の頂上決戦を描こうとする本作が面白くない訳がなく、世界のサメ映画ファンが今最も待ち焦がれている作品である。

ジョーズと戦ったリチャード・ドレイファスがサメ映画にカムバック ©getty

 本作以外にも、『ジョーズ』でフーパーを演じたリチャード・ドレイファスが『ジョーズ』以来およそ50年ぶりにサメ映画に復帰する『イントゥ・ザ・ディープ(原題)』や、『海底47m』、『海上48hours -悪夢のバカンス-』といった傑作サメ映画を手掛けてきたアルティテュード・フィルムの新作サメ映画『ノー・ウェイ・アップ』など、期待が高まる海ザメ映画が続々と制作・公開される予定である。

注目トピックその3「サメ映画の危機」

 一見するとサメ映画は栄華を極めているようだが、実はかなり危機に瀕している。『ジョーズ』以降に制作されたサメ映画は180本ほどあるが、ほとんどが日本以外の国で制作された洋画である。

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 基本的に洋画作品は日本の配給会社が期限付きで配給権を買い付けることで一般に視聴可能な状態になる。問題となるのはその期限で、大抵は5年か7年だ。当然、権利の延長や再契約にはコストがかかる。サメ映画の大半はテレビ映画やビデオスルー映画として制作され、劇場公開されることはほとんどないので、興行収入がそもそも見込めない。従って、権利期間内にどれだけレンタルDVDや配信で収益を上げられるかが重要になる。レンタル店が全盛の時代は「出せば売れる」という恵まれた環境だったが、今や見る影もない状況である。

 ではその分、配信で大きな利益を出せるかというと、これもまた難しい。コンテンツが溢れかえっている現状では、サメ映画のビジュアルパワーを以てしてもその他の作品に埋もれがちであるし、一本当たりの利益もかなり小さくならざるを得ない。加えて現在の円安ドル高により、権利料は実質的に値上がりしている。つまり、今後新たに視聴できるサメ映画は減っていき、現在視聴できるサメ映画は数年以内に配信で観られなくなる可能性が高いのである。

 実際、10年前であればこぞって日本で配給権が争われていたようなサメ映画が日本上陸を果たせていないという事態が多数生じている。さらに悪いことに、配信オンリーでパッケージがそもそも入手できないサメ映画も増えてきている。今見逃すとおそらく今後一生観られないという作品が既に存在しているのだ。

サメ映画はどこへ行くのか

 今後もサメ映画の安定供給を実現するにはどうすれば良いのか? そんなことを考える必要などないと思われるかもしれないが、世の中にはサメ映画が無ければ生きていけない人間だっているのだ。例えば私のように。海外から買付けるのが難しいならどうするか?

 自分たちで作ればいいのだ。サメ映画クラウドファンディングの盛況ぶりが示すように、既に日本でサメ映画は「観るもの」から「みんなで作るもの」へと変わりつつある。「新たにサメ映画を撮る」というだけで常に話題になるのだから、日本の著名なクリエイターや大手映画プロダクションがサメ映画に手を出す日もいつかやってくるはずだ。

『ジョーズ』公開50周年を目前に控え、世界的にサメ映画がますます盛り上がりを見せていくのは確実である。このサメの波に乗り遅れないよう、今のうちから皆さんもサメ映画の世界を覗いてみてはいかがだろうか。