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揺れる家族

40歳を超えた子供たちが結婚せず、心配です。今はよくても老後はどうするのでしょうか? 「身から出たサビ。あなたたち両親が、結婚の素晴らしさを見せてやれなかったってことだ」

40歳を超えた子供たちが結婚せず、心配です。今はよくても老後はどうするのでしょうか? 「身から出たサビ。あなたたち両親が、結婚の素晴らしさを見せてやれなかったってことだ」

『70歳からの人生相談』より #3

2024/01/03

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 人生相談

note

 盟友の立川談志もよく言ってたけど、結婚とは苦しみが半分になって、喜びや楽しみが倍になるものなんだ。俺は結婚してよかったと思うし、結婚しなかったら今の俺はない。

盟友で「毒蝮三太夫」の名付け親である立川談志師匠 ©文藝春秋

 ウチはたまたま子どもがいないけど、作らないんじゃなくてできなかった。できないのと作らないんじゃ大違いだ。やっぱり子どもはいたほうがいい。

どうしても結婚してほしかったら、まずは家から追い出して自立させよう

 でもまあ、ずっと実家にいれば、わざわざ結婚しようなんて思わないかもしれないな。俺たちの時代は、親にも余裕がないから、いつまでも世話になっているわけにはいかなかった。独り暮らしをするにも金がかかる。結婚して二人で暮らしたほうが安上がりだ。男は外で働いて、女は家のことをするという役割分担もはっきりしていたから、結婚すると何かと便利だった。それがいいとか悪いとかじゃなくてね。

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 昨今は、女性も働け働けって言うわりには、家事や育児の負担は相変わらず女性のほうが重い。男は男で独り暮らしで料理なんてできなくても、コンビニがあるから困らない。結婚する必要性を感じない若者が増えるのはしょうがないし、結果として少子化が進むのも当然だ。簡単にどうにかなる問題じゃない。

 嘆くだけじゃ、相談に答えたことにならないな。あなたの場合、我が子をどうしても結婚させたいなら、まず家から追い出す必要がある。自立させないことには、自分の将来を真剣に考えることもない。

 二人を並べて、はっきりこう言ってやったらどうだ。

「あなたたちより私たち親のほうが、先に死にます。あなたたちは、そのあとどうするの。誰かと家庭を築いていく喜びを放棄して、兄妹でこの家に暮らし続けるつもりなら、それでもいい。そんな一生はイヤだと思うなら、この家を出て行きなさい」

 ただ、あなたにそれが言えるかな。たぶんあなたが子離れできていないことが、子どもたちが結婚しない原因のひとつだ。それに、自立したから結婚する気が起きるとは限らないし、相手が見つかるとも限らない。前途はなかなか多難だな。

 確実に言えるのは、子どもが結婚しないことを気に病んで毎日を過ごしていたら、自分も辛いし子どもだってたまったもんじゃないってことだ。さっさと追い出すか、頭を切り替えて「結婚しない人生も、それはそれでいい」と思うか、どっちかを選ばないと、親子ともども苦しい状態はずっと続いていく。

 あなたの今の悩みや苦しみは、誰かに背負わされたわけじゃない。同じところでグルグルしている自分自身が作り出していることに気づこう。

70歳からの人生相談 (文春新書)

70歳からの人生相談 (文春新書)

毒蝮 三太夫

文藝春秋

2023年5月18日 発売

40歳を超えた子供たちが結婚せず、心配です。今はよくても老後はどうするのでしょうか? 「身から出たサビ。あなたたち両親が、結婚の素晴らしさを見せてやれなかったってことだ」

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