「自分が死んでも誰も悲しんではくれません。虚しいです。だからといって、自ら人生を終わりにする勇気もありません。どうすれば前向きな気持ちになれるのでしょうか」
妻に先立たれ、生きる意味を見失った72歳の相談者に毒蝮三太夫さんが送ったアドバイスとは? 著書『70歳からの人生相談』(文春新書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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【お悩み「妻が先立って独りになった。自分が生きている意味が見つからない」】
妻は5年前に先立ちました。65歳でした。子どもはいません。人間関係が苦手で、友達もいません。毎日、買い物がてら散歩するぐらいで、あとはテレビばかり見ています。年金生活で、贅沢したり旅行に行くような余裕はありません。「楽しい」とか「嬉しい」という感情とは、縁がなくなってしまいました。
最近、自分は何のために生きているのかと考え込んでしまいます。地道に働いてきただけの人生で、何のために生まれてきたんだろうとも思います。自分が死んでも誰も悲しんではくれません。虚しいです。だからといって、自ら人生を終わりにする勇気もありません。どうすれば前向きな気持ちになれるのでしょうか。(72歳、男性)
相談してるってことは、まだまだ楽しく生きたいと願ってるんだよ
おいおい、辛気臭いなあ。カミさんに先立たれて寂しいのはわかるけど、後ろ向きなことばっかり言ってたら、ますます気持ちが沈むいっぽうだ。
「何のために生きているのか、何のために生まれてきたのか」なんて、そんなことわかるわけないよ。世界中の哲学者が何千年もかけて考えても、まだ答えが出てないんだから。とりあえずは「生きるために生きてる」ってことでいいんじゃないか。もっともらしい理屈を探したって仕方ない。
「俺はもう終わりだ」みたいなことばっかり書いてあるけど、俺に相談を送ってきたってことは、自分を変えたいと思っているわけだよな。少なくとも心の底では、まだまだ楽しく生きたいと願っている。ボーッと待っていても誰も楽しい毎日のお膳立てなんてしてくれないから、まずは行動を起こそう。
今は、引きこもりに近い状態にあるのかな。たぶん、誰とも話をしない日のほうが多いだろう。そんな状態が続いていたら、人との接し方をだんだん忘れてしまう。最初の一歩を踏み出して、誰かと話す状況を作ろう。「楽しい」とか「嬉しい」という気持ちも、その向こうに待っているはずだ。