文春オンライン

揺れる家族

一人娘も結婚して、孫が2人いて、とても幸せです。でも認知症になったらと心配で夜も眠れません「気にしてもしょうがないよ。なるときはなる。それでもなっちゃったら…」

一人娘も結婚して、孫が2人いて、とても幸せです。でも認知症になったらと心配で夜も眠れません「気にしてもしょうがないよ。なるときはなる。それでもなっちゃったら…」

『70歳からの人生相談』より #4

2024/01/03

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 人生相談

note

 同級生に電話をして話をするっていうことも、認知症の予防になるはずだ。そいつと話すのが何十年ぶりかでもかまわない。「お前なら覚えていると思って」なんて電話されたほうだって、きっと嬉しいよ。電話するいいきっかけになる。

素直で柔軟な年寄りを心がければ「楽しい認知症患者」になれる……かな

 それでもなっちゃったらどうするか。幸いというのもヘンだけど、急になるわけじゃない。少しずつ進行していく。なっちゃっても、楽しい認知症というのもある。言ってることが面白いとかね。それだったら、まあ周囲への迷惑は少ない。

 困るのが、暴力をふるったり暴言を吐いたりする認知症だ。これは人間性や性格に大きく影響されるから、歳を取ってからどうにかしたくても間に合わない。ただ、認知症にならないうちに、なるべく「いい癖」を付けておくことはできそうだ。

ADVERTISEMENT

 日野原重明先生が、よく「年寄りはチャーミングじゃなきゃいけません」と言ってた。素直で柔軟で、いつも笑顔を絶やさない。まわりにも感謝を伝えられる。こっちが悪いときはちゃんと謝る。そういう年寄りになろう。

 けっして若いヤツらに迎合しろってことじゃない。周囲といい関係を築いて、どうでもいいことで腹を立てたりイライラしたりしないようにするのは、自分が心地よく毎日を過ごすためだ。

 頑固ジジイや偏屈ジジイなんて、もう流行らない。昔は「あのおじいさん、しょうがないなあ」って言って、ある程度は周囲や身内にも受け入れてもらえたかもしれないけど、今は鼻つまみ者になるだけだ。だいいちカッコ悪いよ。

 素直で柔軟な年寄りになることを心がけるのは、いくつになってからでも遅くない。そのためには、自信と余裕が必要だ。べつに金があるとかないとか、社会的地位がどうとかという話じゃない。

大事なのは、素直で柔軟で、いつも笑顔を絶やさないこと。写真はイメージ ©getty

 今の自分や、今まで頑張ってきた自分を認めてやることが、自分に対する自信になる。「俺もまあまあたいしたもんだ」と思えれば、心に余裕が出てくる。そうしながら、日々の態度や人との接し方を少しずつ変えてみよう。

 実際の効果はわからないけど、ひたすら心配をふくらませているより、今できることをやったほうが気がまぎれる。家族に「認知症になって迷惑なことをやっちゃったらごめんね」と、あらかじめ謝っておくのもいいかもしれない。

 とりあえずは気持ちだけでも、「なるんだったら楽しい認知症患者」を目指そう。

70歳からの人生相談 (文春新書)

70歳からの人生相談 (文春新書)

毒蝮 三太夫

文藝春秋

2023年5月18日 発売

一人娘も結婚して、孫が2人いて、とても幸せです。でも認知症になったらと心配で夜も眠れません「気にしてもしょうがないよ。なるときはなる。それでもなっちゃったら…」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春新書をフォロー