「認知症という病気は、20年かけて出てくる病気だということなのです。ですから、30歳を超えたら、この病気にならないような食事を心がけて、20年先に認知症にならないようにする行動を始めなければダメなのです」
治療不可能の病「認知症」の正しい予防法とは? 糖尿病専門医の牧田善二氏の新刊『認知症にならない100まで生きる食事術』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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アルツハイマー病は脳の糖尿病
なぜ糖尿病の専門医が認知症についての本を書くのか、不思議に思われている方もいることでしょう。
その理由は、ひとことで言えば、アルツハイマー病は脳の糖尿病で、糖尿病がアルツハイマー病を引き起こす最大の原因だからです。
私の専門は糖尿病ですが、正確には生化学という学問を長年学んできた医学研究者です。中でも、老化を進め、認知症の原因でもあるAGEと呼ばれる物質のことを45年間にわたって研究してきました。極めて多くの方に認知症の検査を行って、「予防」という治療法を行ってきました。
AGEとは、「Advanced Glycation End-products」の略語です。日本語では、「終末糖化産物」と訳されています。
実は私はアメリカのロックフェラー大学医生化学講座でAGEの研究をしているときに、血液中や尿中のごく微量なAGEを測定する方法を世界で初めて見つけて、1992年、科学雑誌『SCIENCE』に発表しました。この発表は世界的な反響を呼び、AGEの研究が進む一つのきっかけになったのです。
そして、AGEは認知症だけでなく、私たちが老化する最大の原因だということが次第に明らかにされてきたのです。AGEこそは老化を招く人類最大の敵なのですね。
あなたは認知症になるのは、歳をとってからだと思っていませんか? つまり、認知症は年寄りの病気で、今あなたが40歳や50歳だったら、自分には全く関係のない病気だと考えているでしょう。
それはとんでもない間違いで、そういう考えの人が認知症をおびき寄せてしまうのです。
認知症という病気は、20年かけて出てくる
まずあなたが知るべきことは、認知症という病気は、20年かけて出てくる病気だということなのです。ですから、30歳を超えたら、この病気にならないような食事を心がけて、20年先に認知症にならないようにする行動を始めなければダメなのです。
もうひとつ大書しておきたいのは、例えば60歳を過ぎて、認知症になってから治療することは不可能だということなのです。