自殺から殺人まで、強烈な死臭に襲われる事故物件には、仏門も神職もあまり近づきたがらないという。しかし、照天神社の宮司である金子雄貴さんは、これまで1500件以上の事故物件のお祓いに真摯に向き合ってきた。
ここでは金子さんがその体験をまとめた『はぐれ宮司の 事故物件 お祓い事件簿 1500件超の現場を浄化!』(講談社)から一部を抜粋。初めて事故物件に足を踏み入れたとき、目の当たりにした光景とは――。(全4回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
事故物件のお祓い宮司の誕生
「事故物件のお祓いをしてくれませんか?」
今から18年前の春、唐突に知人からこのような連絡がありました。
「事故物件?」
話を聞くと、マンションの住民が孤独死をして、知人の知り合いである不動産屋さんが対応に困っているとのことでした。
事故物件とは一般に、自殺や他殺が発生した物件、孤独死などにより特殊清掃が必要になった物件などのことです。
わたしが宮司を務める照天神社は、不動産の神様を祀っています。しかし、地鎮祭や上棟式が主な奉仕で、事故物件は扱ったことがありませんでした。
返事に躊躇していると、知人は重ねて、
「いろいろな神社に頼んだのですが、すべて断られてしまったそうなのです」
この言葉は意外ではありませんでした。古くからある神社では、わざわざ〈孤独死や自殺者のお祓いはお断り〉と掲げているところが少なくない、と知っていたからです。
「わかりました。すぐに向かいます」
わたしは初めて事故物件のお祓いを引き受けることにしました。