自殺から殺人まで、強烈な死臭に襲われる事故物件には、仏門も神職もあまり近づきたがらないという。しかし、照天神社の宮司である金子雄貴さんは、これまで1500件以上の事故物件のお祓いに真摯に向き合ってきた。
ここでは金子さんがその体験をまとめた『はぐれ宮司の 事故物件 お祓い事件簿 1500件超の現場を浄化!』から一部を抜粋。数多くの現場を見た金子さんの記憶に焼き付いた、2つの現場の「奇妙な一致」とは――。(全4回の3回目/続きを読む)
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平穏な場所で起きた事件
事故物件のお祓いを長くやっていくうちに、全国各地から依頼の声が届くようになりました。新潟や北海道、遠くはアメリカなど海外からも依頼があったこともあります。それだけ、どの宗教であれ、日本には事故物件の現場でお祓いやお弔いをする宗教者がいないということです。
しかし、あまりに遠い場合は、費用を出すからとおっしゃっていただいても、時間や道具の運搬を考えるとお断りせざるを得ません。
10年ほど前の4月、群馬県某所にあるアパートのオーナー夫妻から依頼がありました。
照天神社のある神奈川県からは遠かったのですが、車で行ける距離だったので、うかがうことにしました。
そのアパートは、畑の真ん中にぽつんと立っていました。全部で十部屋ある木造の二階建てアパートで、目の前は畑が広がっており、とても景観が美しく、風通しのよい場所でした。窓から地平線が見えるような、開けた一帯です。
そんな事件などとは無縁のようなひなびた場所で、自殺者が出たということでした。