遠距離介護中に「やっていてよかった」ことは?
――柴田さんが遠距離介護をしていた中で、やっていてよかったことはありますか?
柴田 ケアマネージャーさんやヘルパーさんと密にコミュニケーションを取ったことですかね。任せっきりにするよりも「いつもありがとうございます、何か困ったことないですか」とか聞くと「お母さんが洗濯物を干したがって、危ないので困ります」と返ってきたり。
そういう会話を普段からするようにしていると、向こうも要望を言ってくれたり、言いにくいことも教えてくれたりするんですよね。
――具体的には、どういった要望を伝えられたことがありますか。
柴田 母が服を着替えなくなったことで困ったケアマネさんから「娘さんからお母さんに言ってもらえませんか」と言われたことがあるんです。いつも富山で母のことをよくしてくれる親戚の男性がいて、当時、その奥さんが母の衣類を洗濯してくれていたんですね。
それで母によくよく聞いてみると、「彼女は子育てもしているのに、私の洗濯物を増やしてしまうと大変だろうから」と遠慮をしていたことがわかって。
その奥さんは「おばあさんが洗濯物を出してくれないのは、自分に原因があるんじゃないか」と思っていたようで。母に「彼女が落ち込んでいたよ、変に気兼ねしないで洗濯物を出したら?」と伝えたところ、ちゃんと着替えをするようになりました。
遠距離介護をする前に「やっておくべきだった」こと
――コミュニケーションを取っていたからこそ解決できた問題ですよね。逆に介護の前に「やっておくべきだった」と思うことはありますか?
柴田 「もっと親のことを知っておけばよかった」と思います。もっとお母さんの親戚関係を細かく聞いておくとか、いつもよく名前が出てくる人とか、友達関係、仲良しの幼馴染の連絡先だったりを私がちゃんとチェックして、何かの時に会わせてあげたりとかそういうことをしてあげればよかったと。
「親にとって、子どもが人生のすべてだろう」って子どもは勝手に思っているけれど、実は違うんですよね。親には親の世界があって、子どもと同じくらいか、それ以上に大事な人がいっぱいいたりするんですよ。だからもっと親のことを聞いておいて「あの友達にもう一度会いたかった」という願いをかなえたり、「この人はどうなった」という報告ができるようにしておけばよかったなぁ、と思いますよね。