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酒井順子『源氏姉妹(げんじしすたあず)』(新潮文庫、電子書籍のみ)
光源氏と肉体関係を結んだ女性たちが織り成す「姉妹(しすたあず)」の物語。『枕草子』の現代語訳も手がけ、古典に精通されている酒井順子さんが、光源氏は女性たちとどのように「した」のか、『源氏物語』では直接的に描かれることのない濡れ場を、心情を肉付けしながら描いている。これまで誰も書いてこなかったところを突っ込んだ凄い本。

酒井順子『源氏姉妹(げんじしすたあず)』

田辺聖子『蜻蛉日記をご一緒に』(講談社文庫、電子書籍のみ)
男と女の心のすれ違いを描いた女性による文学作品の走りとして『蜻蛉日記』の魅力を存分に語っています。昭和52年の市民への講義をもとにしたもの。田辺聖子さんの読み方は酒井順子さんに近いところがあるような気がします。

田辺聖子『蜻蛉日記をご一緒に』

繁田信一『呪いの都平安京-呪詛・呪術・陰陽師』(吉川弘文館)
繁田信一さんは『殴り合う貴族たち』(角川ソフィア文庫)のような平安貴族の素顔を描き出すような本の他に、安倍晴明など平安時代の人々が必要とした陰陽師という存在を書いた『陰陽師』(中公新書)などがあります。この二冊も面白いのですが、後者の系譜でインパクトの強い、こちらのタイトルを。呪(のろ)いと呪(まじな)いの平安時代を理解する良い手掛かりになるはずです。

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繁田信一『呪いの都平安京-呪詛・呪術・陰陽師』

木村朗子『女子大で『源氏物語』を読む』『女子大で和歌をよむ』(ともに青土社)+『平安貴族サバイバル』(笠間書院)+『百首でよむ「源氏物語」-和歌でたどる五十四帖』(平凡社新書) 
手前味噌ですが、『女子大で『源氏物語』を読む』は勤務先の津田塾大学での講義をもとにまとめたものなので読みやすいですし、前半部のみですが『源氏物語』のあらすじをつかむのにも役立つはずです。和歌については『源氏物語』『和泉式部日記』などを扱っている『女子大で和歌をよむ』を。和歌も楽しみながら『源氏物語』全巻のあらすじをさっくり理解したい方には『百首でよむ「源氏物語」』をおすすめします。古典を読もうと思っても背景知識がなくて挫折してしまうという人には、ぜひ救いの一冊『平安貴族サバイバル』を。『光る君へ』のスタートを前に引き受けた取材でも、「令和の現代は平安時代と似ているんですよね」とインタビュアーの方々がまず読まれてきたのがこちらの本でした。平安の過酷な時代の女性たちの生きざまを現代に寄せて書いています。

木村朗子『平安貴族サバイバル』

●映画・ドラマ作品

映画『源氏物語 千年の謎』(2011)
現実の世界を生きる紫式部と物語の世界を生きる光源氏の二つの愛の物語を描く。紫式部を中谷美紀、光源氏を生田斗真が演じています。若見えする役者さんで光源氏のういういしさがよく出ていました。

TBSドラマ『特別企画 源氏物語』
(主演:沢田研二、脚本;向田邦子、演出:久世光彦)

私のイチ推し作品はこれです。藤壺役の八千草薫が最高です。

紫式部と男たち (文春新書)

紫式部と男たち (文春新書)

木村 朗子

文藝春秋

2023年12月15日 発売