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狡猾な性犯罪者「ウォッチマン」は何者なのか?

 私たちが取材を始めた2019年7月時点で、n番部屋は1番から8番まであったが、そのことを知ったのはコダム部屋を通じてだった。コダム部屋の「お知らせ」は、いわばn番部屋の宣伝だった。コダム部屋運営者のウォッチマンは「お知らせ」をアップして参加者の好奇心をかき立てておきながら、いざ「どこでn番部屋を見られるのか」と聞かれると、その「新入り」を一喝した。

 このようにウォッチマンは、「お知らせ」で参加者をおびき寄せるサクラの役割をしながら、性的搾取動画を見ようと集まるメンバーの上に君臨しようとした。そして、自分はブログとテレグラムのチャットルーム(コダム部屋)でn番部屋を宣伝するパイプ役をしているだけで、「ガッガッ」のように自ら性的搾取物を製作したのではないから罪はないという論理を展開する、狡猾な性犯罪者だった。

 管理人であるウォッチマンは、ルームに参加している加害者たちからさまざまな質問を受けていた。その答えをまとめると、年齢は20代後半、職業は数学の塾講師で未婚。結婚しているのかという質問には、「塾に相手がたくさんいるから、別に結婚する必要はない」と答えていた。

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 未成年の性的搾取物を共有する人物が塾の講師だなんて……。彼の言葉がすべて本当かどうかは分からなかったが、「もしや」と思うと恐ろしかった。彼は「テロの容疑者の捜査だってテレ(テレグラム)が協力した例はない」と言って参加者を安心させ、自分が運営するコダム部屋を「テレ入門者のための取扱説明書」と呼んで自画自賛していた。

 ウォッチマンが運営するチャットルームとブログから流入するメンバーは非常に多かった。その正体を明らかにし、通報する必要があると思った。そうすれば、デジタル性犯罪の加害者がコダム部屋を経由して性的搾取物を視聴したり流布したりするのを防ぐことができる。私たちはウォッチマンの身元に関するあらゆる情報をキャプチャーすることにした。