韓国史上最悪のデジタル性犯罪と言われた「n番部屋事件」。「n番部屋」と呼ばれるテレグラム内のチャットルームでは、卑劣な手口で未成年者を含む女性たちが性的搾取の対象とされていた。その実態を暴き、被害者を救うべく「追跡団火花」として立ち上がった2人の大学生は、どのようにして性的搾取加害者たちを追い詰めていったのか?
ここでは、「追跡団火花」の潜入取材の記録を綴った『n番部屋を燃やし尽くせ デジタル性犯罪を追跡した「わたしたち」の記録』(光文社)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)
◆◆◆
2019年7月、私たちは手の中の地獄を見た
1年前、私たちは記者志望の大学生だった。就職に役立ちそうな受賞経歴が欲しくて、ニュース通信振興会の「真相究明ルポ」コンクールに応募する準備をしていた。記事のテーマは「盗撮問題」。私たち韓国で暮らす20代女性にとって、何よりも強く実感できる問題だったからだ。
私たちは盗撮データが流されるルートを探るため、ネットで検索を始めた。すると、意外と簡単に多くのサイトが見つかった。ある程度は予想していたが、サイトを閲覧しては何度も落ち込み、全身の力が抜けるようだった。10分ほど「ググって」みると、「AV‒SNOOP」というブログが目についた。他のサイトとはやや違った印象を受けたからだ。
他の盗撮共有サイトは画像や動画が中心なのに、このブログには文章が多かった。「ウォッチマン」という運営者が盗撮の画像や動画に関するレビューを書き込んでいたが、その中でもチャットアプリ「テレグラム」の「番号部屋」(当時、加害者らはn番部屋を「番号部屋」と呼んでいた)のレビューが特に目立った。
「奴隷動画」がテレグラム上で共有されていると…
画像もない文字ばかりの投稿なのに、アクセス数はそのブログの中で最も多かった。「ツイッター○○女流出事件(n番部屋)」という投稿をクリックして読んでみると、「ガッガッ〔ガッはGod(ゴッド、神)のこと。すなわち神神の意味〕」というニックネームの人物が未成年者に対して虐待を行っている、という内容だった。投稿の最後には、「奴隷動画」がテレグラム上で共有されていると書かれていた。
「AV‒SNOOP」のページの上段には、「コダム部屋〔コダムはGotham、すなわち映画『バットマン』の舞台ゴッサム・シティから名付けたとされる〕」というテレグラムのチャットルームへのリンクが貼られていた。そこでどんなことが行われているのか、確認しなくてはならない。