韓国史上最悪のデジタル性犯罪と言われた「n番部屋事件」。「n番部屋」と呼ばれるテレグラム内のチャットルームでは、卑劣な手口で未成年者を含む女性たちが性的搾取の対象とされていた。その実態を暴き、被害者を救うべく「追跡団火花」として立ち上がった2人の大学生は、どのようにして性的搾取加害者たちを追い詰めていったのか?
ここでは、「追跡団火花」の潜入取材の記録を綴った『n番部屋を燃やし尽くせ デジタル性犯罪を追跡した「わたしたち」の記録』(光文社)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の2回目/1回目から続く)
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性的搾取加害者たちの年代記
ラビット(編注:「追跡団火花」の追跡によって逮捕されたチャットルームの参加者)の逮捕は始まりに過ぎなかった。残る主要な加害者たちも、必ず相応の代償を支払うべきだ。ウォッチマンやケリーと比べれば、ラビットは小物だ。なかでも「ケリー(シン・○○)」は病的に児童に執着し、「国内唯一のロリ部屋インターンシップ」をはじめ多くの児童性的搾取物のチャットルームを開設していた。
彼は摘発されたソン・ジョンウが運営していた児童性的搾取物サイト「ウェルカム・トゥ・ビデオ」の掲示と同様、「成人物はアップしないこと」という内容の注意事項を掲げていた。ケリーは性的搾取物への通報と取締りを避けるため、児童性的搾取物のファイルは圧縮してアップするよう強調した。
ケリーの行為は日に日に深刻なものになっていった。自分が行った児童への性的搾取について得意げに言いふらし、東南アジアに旅行した際に街頭で撮影した女児の動画をアップすることもあった。その中でケリーは「いくらならいい?」と聞いていた。ケリーの手と声が記録されたこの動画を、私たちは警察に送った。
「公務員」を自称していたケリーの正体
ケリーは「公務員」を自称していた。実際、9級公務員〔公務員の等級で、日本でいう国家3種、地方初級〕合格の「秘訣」を伝授したりしていた。「公務員試験もハッキングできるってことさ」と言って障がい者採用選考を勧め、この「秘訣」をあちこちで共有しろと付け加えた。
逮捕後に確認したところ、ケリーは公務員試験の受験生だった。と同時に、テレグラム・チャットルームの最も積極的なユーザーでもあったのだ。ケリーは「ロリ歓迎」「反社会的・非人道的ファイル歓迎」「高校生じゃ勃たない」としょっちゅう言っては、自分が小児性愛者であることを自慢げにさらしていた。