1ページ目から読む
5/5ページ目
「まさか……ついに……」運営者ウォッチマンの動きに異変
コダム部屋の運営者ウォッチマンの動きに異変があったのは9月末だった。ウォッチマンは、毎朝決まった時間に「グッドモーニング」とあいさつするのが日課だったのだが、その日はあいさつがなかったのだ。
彼は、「俺がグッドモーニングと言わなかったら、警察に逮捕されたと思え」と言っていたことがあった。「何だろう……。まさか……ついに……」祈るような気持ちで警察に聞いてみると、確認して連絡するという返事だった。ウォッチマンは翌日も姿を現さなかった。
その3日後の10月初め、警察から電話が来た。ウォッチマンの件だと察し、図書館から飛び出て電話を受けた。「記者さん、ウォッチマンが捕まりました!」うれしさのあまり、大学図書館の前でぴょんぴょん飛び跳ねてしまった。「ついに捕まえたんだ!」警察からは、共犯者を追っているので厳重に機密を保持して欲しいと言われた。捜査状況が外部に漏れると2次被害が発生する懸念もあった。息詰まるような状況ではあったが、私たちは思わず頰をゆるめた。
――ついにウォッチマンが捕まったんだ。ついに。
ウォッチマンの活動が止むと、コダム部屋の参加者たちは、彼はきっと検挙されたのだろうと囁き合った。ウォッチマンの逮捕を確信した一部会員は退会し、盗撮データの流布も減り始めた。ところが、それも一時的なことだった。