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 ペヤンヌマキ監督はエンドロールの最後に結果を見せている。映画で岸本さんの選挙を支えていた女性たちが次々満面の笑顔を見せる。その背後に流れる歌声は“キョンキョン”だ。小泉今日子さんと上田ケンジさんの音楽ユニット『黒猫同盟』が映画の主題歌を歌っている。そこで繰り返される「ミュニシパリズム」という言葉は、地域に根付いた市民主体の自治的な政治を指す。

世の中を変えたいと願うすべての人にオススメする映画

 今の世に閉塞感を抱き変化を望む人は多いだろう。そのヒントがここにある。それは頭で考えた“理屈”じゃなく肌感覚の“怒り”こそ変革の力になるということ。岸本さんが勝ったのは住民の怒りに根差した選挙戦を闘ったから。野党共闘は主たる理由ではない。

©️2024 映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

 そして選挙は僅差でも勝たなきゃ意味がない。子育ての街で知られる明石市の泉房穂元市長も初当選は69票差だった。しかも世直しには1回勝つだけでは足りず、繰り返し勝たねばならない。岸本さんの勝利宣言の言葉通り、「選挙は続くよ どこまでも」なのだ。

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 世の中を変えたいと願うすべての人に、この映画をオススメする。

 

INTRODUCTION
人口57万人、有権者数47万人という規模の区長選にも関わらず、わずか187票差で決着した2022年杉並区長選挙。この選挙に立候補し現職を破った岸本聡子と彼女を草の根で支えた住民たちに密着したドキュメンタリー。

監督は杉並区在住の劇作家・演出家ぺヤンヌマキ。彼女が長年住むアパートが道路拡張計画により立ち退きの危機にあることを知り、止める方法を自身で調べ動き始めたのが本作制作のきっかけだった。今まで無縁の世界だった選挙、政治の世界へカメラ片手に飛び込み、住民たちと連携し、候補者や支援者たちとも悩み考えぶつかりながら、合意形成のため対話を積み重ねていくリアルなやり取りが数多く記録されている。

STAFF&CAST
監督:ペヤンヌマキ/出演:杉並区民のみなさま/2024年/110分/日本/https://giga-kutyo.amebaownd.com/公開中