道路拡張計画のために20年住んだアパートが立ち退きになってしまう……? ある日突然降ってわいたそんな不安から東京都杉並区の区政を調べはじめ、気づいたら杉並区長選挙のドキュメンタリー映画を撮っていたというペヤンヌマキさん(47)。
選挙ではペヤンヌさんが密着していた岸本聡子さんが187票差の大接戦で当選、その模様は『映画 〇月〇日、区長になる女。』という映画になった。
ペヤンヌさんと言えば演劇ユニット「ブス会*」で、女性同士の人間関係をあぶり出す会話劇を得意としてきて、政治のイメージはまったくない。
彼女がなぜ選挙の世界に惹かれて行ったのか、突然、選挙に密着した自分をどう思っているのか、お話を聞いた。
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「そんな簡単に追い出されちゃうのか、ってびっくりしました」
――アパートが立ち退きになってしまう、というのはどんな状況だったんでしょう?
ペヤンヌ 地元の行きつけの病院に行ったら、ビラが貼ってあったんです。それを何気なく読んでたら「あれ、私の家立ち退きエリアに入ってない?」って。よく読むと、東京都の道路を伸ばすので病院を含めそのエリアの家は全部立ち退きになります、と。長いこと住んでたのに、そんな簡単に追い出されちゃうのか、ってびっくりしましたね。
――今のアパートには20年以上住んでいるんですよね。
ペヤンヌ 18歳で長崎から上京して、大学の友達が高円寺、阿佐ケ谷、荻窪に住んでいる人が多かったので私も3年のときに荻窪に引っ越して、それ以来ずっと杉並区。田舎で育ったから、ビルがたくさんあるいわゆる都会が落ち着かなくて。卒業して就職した時に今の阿佐ヶ谷のアパートに引越したまま、もう20年住んでいます。善福寺川が近くを流れていて、ウォーキングしたりバードウォッチングしたりのどかで気に入ってるんですけど。
――そのアパートが立ち退きになる話は、ビラを見かけるまでは知らなかったんですか?
ペヤンヌ よく考えると、以前郵便受けに測量云々という紙が入ってたような気はしました。後で聞くと、2018年に区報に載ったらしいんですが、郵便物も区報も全部は読めていなかったみたいです。でも「自分の家が無くなるなんて、そんなこと誰が決めたんだ!」という気持ちになって杉並区の区政について調べはじめました。