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――そこにコロナ禍の不安が影響した部分もありますか。

ペヤンヌ 実はコロナ禍に入る直前、2020年に大きな病気をしたんです。それまで自分は勝手に90代ぐらいまで生きると思っていて、「私は大器晩成だから、90代までに何かを成し遂げればいい」と考えていたんですが、意外と早く死ぬかもしれないと思ったとき、ちょっと意識が変わったんです。

©文藝春秋

――出産のことで悩むことがなくなったタイミングで、健康の不安と住まいを奪われる危機が重なったことで、関心の方向が変わっていったという感じでしょうか?

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ペヤンヌ そうかもしれませんね。私はもともと自分が興味を持ったことでしか作品が作れないタイプで、これまでは恋愛や人間関係が大きかったけど、今の年齢・状況で、住まいや暮らしを奪われる危機に直面して、初めて政治に興味を持つようになったので。

 まさか自分がこんなに政治にアクセスするような作品を作るとは人生何が起こるかわからなくて面白いですよね。

「社会問題に疎い」のがコンプレックスだった

――ということは20代や30代だったら、家が立ち退きになると言われても市民の集会までは行かなかったかもしれない?

©️2024 映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

ペヤンヌ どうでしょうね。若い頃は自分のことで精一杯で、仕事のキャリアをどうしようとか恋愛が大変だとかで全然余裕がなかった気がします。演劇を作ってるのに社会問題に疎いのがコンプレックスで新聞を契約するんですけど、結局読まなくて解約というのを何度も繰り返してました。興味がないことって、本当に頭に入ってこないじゃないですか。だから私は今のタイミングで選挙や政治に興味が持ててよかったなと思います。

 本当はもっと若い頃に政治を自分ごととして捉えることができたらよかったという思いもあります。だから、この映画を若い人にも見てもらいたいですね。どうしたら届くんでしょうね。