韓国の華城(ファソン)市で発生し長年未解決であった「華城連続殺人事件」の犯人が、DNA解析によって特定されたのは、2019年のことだった。この事件は「韓国三大未解決事件」の一つとして広く知られており、犯人の身元が明らかとなったことが大きく報じられると、あと二つの「未解決事件」にも再び注目が集まった。

 これらの未解決事件には、二つの共通点があることはご存じだろうか?

 一つは「映画化された」こと。もう一つは、事件がすべて「1991年に起こっている」ことである。今回は、「三大未解決事件」および映画化された作品を紹介しつつ、1991年の韓国に一体何があったのかを見つめてみたい。

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※写真はイメージです ©AFLO

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(1)10人の女性たちが殺害された「華城連続殺人事件」

 まず、発生から8年後に犯人が明らかになった「華城連続殺人事件」は、『殺人の追憶』というタイトルで映画化されている。これは、映画『パラサイト』でオスカーを獲った監督、ポン・ジュノ氏がメガホンをとった代表作の一つである。日本でも2004年に公開されているため、ご覧になった方もいるのではないだろうか。

「華城連続殺人事件」を題材にした映画『殺人の追憶』は、2003年に韓国で公開され560万人を動員。興行成績でも年間トップと、大きな反響を呼んだ

 ソウルから南に位置する華城市にて、1986年から1991年にかけて行われ、13歳から71歳の女性たち10人が強姦され殺害されたこの事件。

 当時、マスコミや世論の注目が集まると、警察は早期解決を図り総勢205万人もの警察官を配備し、2万人を超す容疑者を取り調べたと言われているが、結局解決には至らなかった。そして、2006年には悔しくも時効が成立し、事件は迷宮入りしてしまった。

殺人罪で服役中の男とDNAが一致

 ところが、2019年9月。新たに開発された残留DNAの増幅・再構築技術により、事件は解決に向けて大きく進展する。

 犯行現場に残された証拠から新たなDNAを抽出し、受刑者のDNAデータベースと比較したところ、義妹を殺害し終身刑で20年以上服役中だったイ・チュンジェと一致したのだ。

 同年10月2日に行われた警察のブリーフィングによると、イ・チュンジェは華城連続殺人事件を含む14件の犯罪と30件以上の強姦及び強姦未遂を自白したという。こうして、長らく謎に包まれていた華城連続殺人事件は解決した。 

 さて、この事件を基にした映画『殺人の追憶』を観た人であれば、印象的なラストカットが記憶に残っているだろう。