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【8区】観戦スポットとして面白い藤沢橋

 100回大会から日本テレビは箱根駅伝でのドラマの紡ぎ方に明らかに変化がありました。これまで「お涙頂戴」や「過剰すぎる情報」と揶揄する声もあった日本テレビの箱根駅伝中継ですが、一番の大きな変化は復路鶴見中継所。「繰り上げスタート」のシーンです。

 復路はトップ通過から20分が経過しようとすると襷が用意され繰り上げスタートへのカウントダウンがはじまります。毎回「繰り上げスタートだ!」「あと30秒!」と声を張り上げて実況され、まるで襷が繋がらないことが大罪のような報じられ方をしていました。

 今回は淡々と事実だけを実況し、ポジティブな要素を探そうとする演出側の配慮を感じました。転んだり、繰り上げスタートのようなネガティブな要素を大きく取り上げるのではなく、人間関係や選手の背景にこそドラマがあるのだと、放送のあり方が変わってきたように思いました。

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 そしてひと目でシード圏内までのタイム差が表示されるような工夫も盛り込まれ、見た目と実際の順位が違うという難しい箱根駅伝中継を更にわかりやすくしようとするアップデートに100回記念大会に対する日本テレビの意気込みを感じたのでした。

 さて8区、僕は藤沢橋の沿道に足を運びました。ここは駅からも近く、箱根駅伝の追いかけ観戦をする人にとっては欠かせない場所です。ここで耳より情報をお伝えしますと、藤沢駅を降りた人たちは95%は出口を目指して走る「藤沢ダッシュ」をするのですが、実は古参のマニアだけが知っている抜け道があるのです。それが駅前のクイーンズ伊勢丹です。この店内を通れば100mくらいショートカットできるのです。ただし走ると周りの迷惑になるので、すり足で足早に通過するぐらいに留めておくようにしましょう。

“嘘の遊行寺の坂”に要注意

 なぜ藤沢橋がおもしろいのか。直前に15kmの給水と声かけがあり、行く手には“嘘の遊行寺の坂”が控えているからです。遊行寺の坂は、8区の難関として紹介されるのでテレビでもお馴染みですが、その手前にも坂があって、ここを遊行寺だと思ってしまう選手がいるんです。嘘の遊行寺の坂で力を使ってしまうと、本当の遊行寺で失速しかねない。だから15kmの声かけポイントでは、運営管理車から「ここじゃないからな。その先の遊行寺でいくんだからな」と監督の声が飛んでくる。とても見どころのあるスポットなのです。ちなみに嘘の遊行寺の坂というのは、現在駒澤大でコーチを務める高林祐介さんが名付け親です。

 藤沢橋では、地元である神奈川大への声援も凄かった。なぜなら35年にわたり神奈川大の監督を務め、全日本大学駅伝2連覇を成し遂げるなど、神大の一時代を築いた大後栄治さんが、今大会で監督を勇退することを発表したからです。8区に限らず、沿道の至るところで、「大後先生ありがとう」という横断幕が掲げられていましたし、マラソン男子日本記録保持者の鈴木健吾選手も応援に駆けつけていました。新興大学が勝つという流れを作った立役者である大後監督が退任し、ひとつの時代がおわったのかなと感慨深いものがありました。