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まだ土のにおいが鼻を突く土砂崩れ現場の向こうからバリバリ倒木を乗り越え、草木を掻き分け自衛隊員に手を引かれた孤立していた集落の住民が次々現れる。
歩行が困難なお年寄りやけが人は担架に載せられ、藪の中を進んでいく。ズルズルの雪と泥に足を取られ、時折悲鳴が上がるのを若い自衛隊員が「がんばれ、もう少し」の激励の声をかける。
「何じゃあ! これは」
防災頭巾をかぶったお年寄りからヘルメットをかぶった子供もいる。皆両手や背に携えるだけの荷を携え、ある家族はペットもいっしょにつぎつぎに助けだされてくる。やっと待機している、昨日の夜いっしょに峠を越えた名古屋消防の若い衆に抱きかかえられるように地割れだらけとはいえ路面に降ろされる。
「ありがとう、ありがとうございます」「やっと助かりました」「本当に怖かった」
皆ほっとしたのかくずおれるようになりながら自衛隊員や消防の若い衆に感謝の言葉をかける。
暗闇と余震に怯える二夜をある者はトンネルに避難し、ある家族は倒壊したままの我が家やガレージの中で身を寄せ合って過ごしたというのである。しかしこれからもしばらくは不便な暮らしはつづく。この朝、救助された30人以上の孤立住民はこの街の避難所の一つ、門前中学校まで第10師団の高機動車で運ばれていった。昨夜不肖・宮嶋が訪れた電気も水道もまだ復旧していないあの避難所である。
「何じゃあ! これは」