人生100年時代に突入して、1人の人が生涯に「食べる」回数は人生50年、80年時代に比べて数万回増えました。しかし、多くの人は何をどのように食べたら健康になれるか、体内で栄養はどんなふうに使われるのか、詳しく教わる機会がほとんどありません。そこで高齢者栄養ケアの第一人者が薦める“長生きできる食べ方”を『100年栄養』(サンマーク出版)より一部抜粋。100歳を超えても現役医師として活躍していた日野原重明先生の食生活をご紹介します。(全2回の前編/続きを読む)
ご長寿だった先輩が食べていたのはステーキだけではなかった
「健啖家は長生き」と聞くと私にはある方のお顔が浮かびます。
2017年に105歳で逝去された医師の日野原重明先生のお顔です。生涯現役で医師として働き、作家として多数の著書を残されたので、ご存知の人も多いでしょう。
生前の日野原先生というと「90歳を超えてもよくステーキを召し上がっている」「100歳を超えても食生活がほとんど変わらない」といったエピソードが繰り返し報道されていました。
年齢を重ねても"お肉"を食べるのが健康にいいというイメージが広まったのは、日野原先生の影響だったかもしれません。そんな報道でご存知の人も多いかもしれませんね。
しかし、日野原先生はおそらく、ステーキだけ食べていたのではありません。ごはんやパンは召し上がっても「当たり前」だから報道されなかっただけです。
日野原先生は58歳のとき、よど号ハイジャック事件の人質となりましたが、無事に生還し、その後は「一度死に、さらにいのちを与えられた」とお考えになって、常に天与の役割を意識して、大事に生きておられました。
「生活習慣病」という概念をつくり、広めたのも日野原先生でした。それだけに人一倍、体を気遣っておられたので、お肉以外もしっかり召し上がり、栄養を保っていてこそのご長寿だったのです。
私たちが先人に学ぶなら、「年齢を重ねても"お肉"を食べる」ではなく、「年齢を重ねてもより好みなく、しっかり食べる」が正解です。