病院の広い集中治療室の入口で、警察官が警戒している中での犯行でした。とても広い集中治療室のどこのベッドに石塚組長が寝ているのかだれもわかりませんが、一人だけ知っている人がいるのです。それが矢野会長です。石塚組長の手術が終わってから唯一面会した人が矢野会長なのです。矢野会長なら、ピンポイントで石塚組長のベッドの位置がわかったのです。そして襲撃をさせることができたのです。
私は、「ひどいことするな」と思いました。「誰がやったんだ!!」と、矢野睦会の者たちは、いきり立っていました。みんなで話し合っていた所、矢野会長は、「群馬の人間(大前田一家の者)がやった」などと言っていました。しかし石塚組長が群馬の人間に殺されたという割には、「潜れ」とか、いつでも攻撃できるように「待機しろ」などと、すぐにでも反撃できる用意は何もなされませんでした。
この事件がテレビのニュース速報に流れ、その時、たまたまテレビを見ていた女房から、「石塚組長が殺されたってニュースでやってるよ」と教えられ、矢野会長の側近の佐々木(仮名)にどこの病院か聞きました。
始めは間違えて、日大病院に向かってしまい、それからもう一度改めて佐々木に聞いた所、日大病院ではなく、日医大病院の間違いだとわかり急ぎ向かった所、病院には報道の車がいっぱいで、中に入るのはなかなか難しく、やっとの思いで中に入ると矢田本部長に、「すぐ帰った方がいい」と言われて、病院を後にしたことを覚えています。
掘られた穴
要町事件のメンバーの一人と仲良く付き合っていたので、詳しく教えてくれました。そのメンバーの一人とは林ちゃんです。林ちゃんは運転手役で、要町病院の裏の路上に車を止めて、他のメンバーが石塚組長を連れて来るのを待っていたそうです。ところが石塚組長が抵抗したので連れて来るはずのメンバーがその場で発砲したそうです。事件の後で林ちゃんと秩父にドライブに行った時に言っていたのですが、矢野会長に命じられて事件前に穴を掘りに来たそうです。
その穴に連れて行ってもらい、「この穴に石塚さんを埋める予定だったんだよ」と、教えてもらいました。穴はちょうど一人がスッポリ入る位の大きさでした。これで石塚組長は矢野会長の命令で殺されたのだと確信しました。
メンバーの他の2人は片岡総本部長と井口行動隊長で、けん銃を使って石塚組長を撃ったのは、井口行動隊長だということも教えてくれました。
私は身内の人間に手をかけることには絶対に反対です。なぜなら身内同士で誰も信じることができなくなってしまうからです。後から考えると、日医大病院事件で石塚組長が殺された時点で、警察が矢野会長を逮捕していれば、火炎放射器を使った放火未遂事件やその後のスナック銃乱射事件など、おこらなかったでしょう。
日医大病院事件の共犯者が、実行犯に矢野会長が携帯電話で命令する声を聞いたと証言しているのです。それでも警視庁は逮捕しなかったのです。なぜ逮捕しなかったのでしょうか、不思議でなりません。逮捕したのは、スナック銃乱射事件がおこってからです。あまりにも遅すぎでしょう。