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婚約会見のヘアスタイルに込められた“秘密”

――どんなことに気を配ってヘアセットをしていましたか。

多田 デザインです。洋服がシンプルな時はシンプルに仕上げるのを心がけて、ボブを生かす。より華やかなドレスの場合はアップにまとめたほうがいい。たとえば「告期の儀」のような洋服であれば、そこまで堅くしなくてもいいんじゃない? といったあんばいでやっていました。

 この婚約会見のヘアスタイルには、秘密があるんです。この日の夜、雅子さまはブルーのドレスに着替えておられるでしょ?

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1993年1月19日、婚約内定記者会見での小和田雅子さん(当時) ©JMPA

――そうですね。1月19日は皇室会議と婚約会見を終え、雅子さまはレモンイエローからブルーのドレスにお召し替えをされて、夜は当時の天皇皇后両陛下のご招待で、天皇ご一家、秋篠宮ご一家と夕食をともにされました。そのあとご自宅に戻られています。

多田 実はこれ、黄色いお帽子を取った後のヘアスタイルなんです。夕食のときのドレスに合わせたヘアスタイルをセットして、その上から黄色いお帽子をお召しになっていた。

――あっ、ブルーのリボンが。

1993年1月19日、天皇ご一家(当時)との夕食会を終え、帰宅した小和田雅子さん(当時)。実はレモンイエローの帽子を取った後のために、事前にセットされたヘアスタイルだった ©時事通信社

多田 そうそう。ブルーのドレスにあわせて、事前にボブスタイルにリボンをお召しになっていたんです。ちょうどお帽子で隠れるように。どうしてこんな手品のようなことになったかというと、あちらではドレスの着替えも全部ご自分で、お帽子もご自分で取らないといけないようだったんです。少なくとも、私たちは中に入ることができず、本来であれば、誰かが付き添いをさせていただいて、お手伝いできればよかったのですが。……これ、お帽子を外すのって大変なんですよ。

――どうやって固定するものなんですか?

多田 お帽子って、脇に蛇腹のようなフックがついているんです。このフックにグッとヘアスタイルをかませれば、はずれません。ところが、いざご自分でお帽子を取るとなれば、なかなか難しい。そこで、このときはフックを髪の毛にピタッと寄せて、そこにピン2本を打ちました。両サイドにフックがありますから、両サイドに1本ずつ。つまりこのお帽子はピン2本でしか留まっていないんですよ。万が一大きく頭を動かせば、「ちょっと待って。落ちる、落ちる」くらいの軽さで、雅子さまはお帽子をお召しになっていたというわけです。

――そんな状態では、内心ドキドキですね。

多田 はい、それはもう。ですから、雅子さまにはリハーサルのようにして、ピンの外し方を覚えていただいたと思います。「ここですよ」「分かった、分かった。これね」といって。もちろん、頭では外し方を分かっているわけですが、無事夕食後にご自宅へお帰りになった姿をニュースで拝見して、本当にホッとしましたよ。

――まったく崩れていませんね。すごい。