最近は劇場上映を経ずに、いきなり動画配信で新作映画が公開されることも珍しくない。ネットフリックスで独占配信され、世界各国で軒並み映画部門1位を獲得し話題沸騰の『終わらない週末』はその最たる例だ。出演はジュリア・ロバーツ、イーサン・ホーク、『ムーンライト』でアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリと錚々たる顔ぶれ。物語は週末をのんびり過ごそうとある白人家族が高級避暑地の別荘を借り、車でそこへ向かう場面から始まる。「終わらない週末」という宣伝文句に惹かれて訪れたのは都会から程近いが自然豊かで煩わしい隣人もいない閑静な集落。いかにも都会に疲れた現代人が癒しを求めて行きたくなる場所だ。車内では家族4人が各々スマホで通話、ゲーム、動画視聴を楽しむ。核家族がさらに単独化した現代の家族像を巧みなワンショットで見せる。緑が生い茂る森の別荘地へ向かう空撮は『シャイニング』を彷彿とさせる。冒頭から手練れ感を隠せない作風。監督・脚本は傑作ドラマ『MR.ROBOT』の奇才サム・エスメイルだ。画面の隅々にまで“企み”がちりばめられたカットが続く。
近くのビーチを訪れる家族。水平線に一隻のタンカーが見える。ふと気づけば浜辺のすぐ傍にまで接近。止まると思いきや、そのまま砂浜に突進し座礁! 別荘へ戻るとWi-Fiが使えず、テレビもラジオも受信できない。何かがおかしい……。深夜にはドレスアップした黒人の父娘が突然、訪ねてくる。聞けば、この別荘の家主だという。クラシックコンサートの帰りに街で停電があり、自宅へ戻らずこの別荘へ向かったと言うのだが……。
その後の展開はネタバレになるので控えよう。我々が暮らす現代社会はいかに脆い社会インフラの上に成り立っているか。広がる疑心暗鬼がどれほど恐怖や差別を増大させるか。様々な解釈や哲学的示唆を与えてくれる作品だ。
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