クリスマスが近づくと街中に流れる定番ソングが英国のポップデュオ、ワム!の約40年前のヒット曲「ラスト・クリスマス」。奇しくも7年前のクリスマス当日(2016年12月25日)にジョージ・マイケルは天国へと旅立ったが、その透き通ったヴォーカルは色褪せず、どんな時代にもマッチする不朽の名曲として愛され続けている。80年代前半に数々のヒット曲を生み、絶大な人気を誇りながら僅か4年で解散したワム!。そのデビュー40周年を記念して制作された長編ドキュメンタリーが『ワム!』(ネットフリックスで配信中)だ。ほぼ全編をジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーの秘蔵インタビュー音声で構成した本作。青春の煌めきと終焉を彼らが赤裸々に振り返る。その語りが、時の儚さや残酷さ、哀愁を浮き彫りにするモノローグ・ドキュメンタリーだ。

©佐々木健一

 2人の出会いは小学校時代に遡る。アンドリューのクラスにある日、小太りで眼鏡の内気な転校生ヨルゴス・パナイオトウがやって来た。ギリシア系キプロス人の父を持つ、後の「ジョージ・マイケル」である。明るく社交的な性格のアンドリューが彼の世話係となり、2人は音楽を通じて絆を深める。16歳でバンドを組み、1年で解散した後も2人で曲を作り続けた。18歳の時、デモテープをレコード会社に持ち込み、テレビ出演を機に一気にブレイクを果たす。当初は外交的なアンドリューが牽引役だったが……。

「ジョージの曲作りの技術は驚くべきスピードで進化した」

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 ジョージ・マイケルという“別人格”を纏い、天性のヴォーカルと音楽家としての才能を開花させる相棒との差をアンドリューは痛感する。やがてジョージが曲作りの担当となり、20歳にして自らプロデューサーまで務めるほど成熟する。圧倒的な音楽的才能、カリスマ性を前に幼馴染みの2人の関係性が徐々に変化していく過程が切なく響く。

INFORMATION

『ワム!』
https://www.netflix.com/jp/title/81137188