創造性は“制約”の中から生まれるという。実際、「密室」という限られた空間から生まれた名画は多い。『十二人の怒れる男』や『CUBE』といった密室劇は一つの場所や状況だけで物語を完結させる“ワンシチュエーション”を貫いたことで生まれた傑作だ。そうした系譜に新たに名を連ねる作品が、スペイン発のネットフリックス映画『ノーウェア:漂流』。世界各国で映画部門ランキング、トップテン入りを果たしている大ヒット配信作だ。

 本作の舞台は「コンテナ」。物流に革命を起こしたとされる、あの四角い箱だ。その中に閉じ込められるだけでも息苦しいが、コンテナは悪天候で転覆した船から離れ、大海原にぽつんと浮かんだ状態に置かれる。壁には銃痕があり、その穴から海水が徐々に流入し、いつ沈んでもおかしくない状況……。そんなコンテナの中に臨月の妊婦ミアがただ一人、取り残されるのである。密室に加え、浸水+出産+飢餓というタイムリミットサスペンスの要素をてんこ盛りにしたサバイバル密室劇だ。

 携帯電話も使えない。ならば、コンテナ内にある木箱を開け、中の品物を活用するしか生き残る術はない。だが、箱の中身はプラスチックの保存容器、衣服、40インチの液晶テレビ、イヤホン、酒のみ。どれも大量にあるが、役に立ちそうな物はない。食料はほとんど無く、絶望感に打ちひしがれる。この状況で、なんと妊婦ミアが破水する。

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©佐々木健一

「まだダメ……お願い、もう少しだけ待って。今はダメ!」

 彼女はコンテナ内の貨物を固定するロープを産綱のように握り、自力で出産を果たす。

 母親となった彼女はここから驚異のサバイバル術を発揮する。容器に保存した胎盤は食料に。大量の衣服はオムツ替わりに。さらには、赤ちゃんのウンチをある物と組み合わせて使い、食料問題まで解決してしまうのだ。限られたアイテムという“制約”も見事に生かした演出が光る。

INFORMATION

『ノーウェア:漂流』
https://www.netflix.com/jp/title/81449034