『トップガン マーヴェリック』の記録的な大ヒットに沸いた今年。公開前は「80年代のヒット作を今更?」と期待感は薄かったが予想は良い意味で裏切られた。同じく80年代に誕生した「プレデター」シリーズの最新作『プレデター:ザ・プレイ』(ディズニー+で配信中)も配信映画として予想外のヒットを飛ばしている。米国では動画配信サービスの初日視聴数の過去最高を記録し、他の地域でも公開から3日間で最も観られた作品となった。第1作(87年公開)のヒット以降、何本も続編やクロスオーバー作品が作られ食傷気味だったが再び息を吹き返した。
本作は一連の「プレデター」シリーズの前日譚にあたる。舞台は約300年前の北米大陸の大平原。女性ながら戦士になることを夢見るアメリカ先住民コマンチ族の娘ナルが未知の地球外“狩猟”生命体プレデターと対峙する。いや、待て。あのアーノルド・シュワルツェネッガー演じる百戦錬磨の軍人でも命からがらなんとか倒せた相手だ。女性がプレデターと闘うなんて流石に無茶な設定では……。
だが、そこが本作の見所。圧倒的強者に彼女は鋭い観察力と知恵で対抗する。幾多の危機も糧とし、最強の敵を狩る策へと転ずる。無駄のない構成と展開、そして見事な伏線回収。極めつきはラスト、『プレデター2』(90年公開)でダニー・グローバー演じる刑事がプレデターから“勇者の証”として贈られた1715年製の銃が登場する。まさかの30年越しの伏線回収だ。
そもそもプレデターは決して侵略者ではなく、あくまで「狩りを嗜む」ためにたまたま地球を訪れた者。弱者や無防備な者は獲物として魅力が無いので襲わない。狩った人間の内臓は取り出し、皮を剥いで吊す。一見、残虐なその振る舞いも人間が狩りで得た獲物に行う処置と何ら変わらない。「狩り」という原点に回帰した本作は、実は人間中心主義を見直す良作でもある。